第24話

私が逃げた話
164
2019/10/18 15:00
はぁぁぁぁ!?
奪っちゃった☆じゃねーーーよ!!
何考えてんのこの馬鹿は!!!


いや天才だけどそういう意味じゃなくて!!
谷澤 春渡
谷澤 春渡
…うん、ちょっとあなた、二人きりで話したいんだけどいいかな?
凄い、目と口しか笑ってないけど大丈夫かな春渡?


しかも何故に二人きり強調したの?
ガチギレじゃん、キレたいのこっちなんだけど。
冬木 拓
冬木 拓
おー、俺は気にすんな。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
え、いや、でも。
冬木 拓
冬木 拓
すみませーん!
麦茶貰っていいですかー?
店員
はいはーい!
冬木がそう言うと店員さんが奥から返事をする。


いや、気にすんなって言われて気にしない訳ない…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
ごめん冬木、サンキュ。
冬木 拓
冬木 拓
おう。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
え?春渡?ちょっと!
手首をしっかりと春渡に掴まれて、


冬木が見えづらいとこに。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
ごめん、あなた。手首大丈夫?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
あ、それは大丈夫だけど。
急に何?どうしてそんな怒ってるの?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
…怒ってる?
まさか気付いてなかったとでも言うのか?


あのいつも笑顔のまま冷静を保てる春渡が!?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
うん、少なくとも私にはそう見え…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
まじかぁぁぁ……
と、私の言葉を遮って、しゃがんでしまう。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
僕、今日ダサいなぁ…
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…ダサい?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
冬木がカッコいいのは知ってた。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
ちょっと張り合ってやろうとか、
思っちゃってさ。
春渡はいつもと違う、無理した笑顔でそう言った。


…春渡らしいと言ったら春渡らしいかもしれない。
でも、私が思うに、だけど。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
そんなの、敵わないに決まってるよ?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あはは、だよね。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
そりゃあ、冬木には冬木のカッコよさがあるし。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
でも、勿論春渡には春渡のカッコよさがあるの、忘れないで?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
そりゃ、同じことで張り合おうとするから、ダサく見えちゃうんじゃないの?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
春渡はそのままで、
十分カッコいいよ。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
…そういうの照れるわ~。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
あー、ベラベラと…ごめん…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
うぅん、あなたさ。
僕の好きな人とか知ってる?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
いや。
春渡は女子に懐かれやすい。


だから、隠れファンも多かったし。


そういうのを、考えたことないわけではない。


でも春渡が人を好きになるとか、


想像もつかないじゃん。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
だよねー。
だって目の前にいる人だから。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…どういう意味で?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
告白だけど?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…このタイミングで?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
だって、冬木に先越されちゃったからね。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…嫉妬かよ!
谷澤 春渡
谷澤 春渡
だから、初めて告白された日にすれば、僕もそれに含まれるじゃん。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
よく分かんないけど…
はーい、脳が停止寸前。


ど、どういうこと?


それはいつから?


てか何で二人とも告白?


駄目だ、頭の整理がつかないわ。
と、悩んでいると、急に雨が弱まった。
私の心は雨なんですけど?(笑)
冬木 拓
冬木 拓
おーい、まだー?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
え?あー、あなた?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
ご、ごめん。帰ってもいい?
冬木 拓
冬木 拓
体調悪いの?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…うん。ごめん。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
尚更じゃん、送るって。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
いや、一人にしてもらえると助かるかな…
冬木 拓
冬木 拓
でも…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
冬木。
冬木 拓
冬木 拓
分かった、気を付けろ。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
本当…ごめん。
口をついて出た言葉だった。


私は最低だけど。


色々考えて、私に必要なのは悩む時間。


それも分かってくれると、信じて逃げた。


あれだろ?


逃げるは恥だが役に立つ。


ごめん、春渡、冬木。



こうして、少し小雨の中、


〝初めて告白された日〟


は、私が逃げて終わってしまった。

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