と、軽く出ていくお母さん。
ピーンポーン。
え?お母さん?
腕…痛い?
何か持ってきてんのかな?
と思いながらドアを開けると、
やけに自慢気に話すあきのん。
これしか言えないわ。
やってくれたなぁ。
ストンっと座らせられて、
髪を触られてる感覚がする。
笑顔が覗きこんでくるんだけど、
その笑顔の裏側が恐ろしすぎて。
と、20分位。
私の気持ちが分かっているかの様に手鏡を渡してくれる。
前髪はそのままで、髪は束ねて横にお団子。
後はいつも通りカチューシャをつけてもらった。
と、私はこの髪型に意外とテンションが上がっていた。
そこにはもう髪型をセットしたあきのん。
あきのんは、触覚をカールさせて、
髪は三つ網ポニーテール。
あとはいつも通りピンがついていた。
と、さっきの重そうな荷物から浴衣を出してくる。
図星か。しっかり釘は刺しておこう。
その後、苦戦しながらも結構上手く出来た。
私の帯は少し銀気味の白で、
あきのんは下の方に蝶が描かれた黒い帯。
私はお母さんに連絡して、遅くなりますと伝えた。
カランカランと下駄の音を響かせながら、
祭り会場の神社へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。