そして、朝。
あきのんと登校したけど、春渡は見かけなかった。
会わなくて良かったなんて、心の隅では思ってる。
けど、謝りたいのが本心。
…と、いうことで
机に肘をついて、その手を組み、
目は死んでいると思われる。
こうして〝今〟に至る。
そして、結局放課後まで話す機会は無かった。
そして、皆わらわらと帰り始める。
まだ間に合うかな…と、急いでカバンを持って、
下駄箱へ走った。
すると、
あきのんは外を指差して、行ってこいと、
笑ってくれる。あーあきのんが男だったらな。
ソッコー彼氏にしてたっつの!!
アイツというのは、きっと春渡かな。
そしてあえて皆の前で、
名前を出さないイケメンあきのん。
と、歩くのも速い春渡にやっと追い付いて、
もう疲れて何話すか忘れそうだわ…
やっぱこのノリが大好きだもん。
走ってきたし、呼吸を整える。
そして、春渡の顔を見る。
『好き』という単語が春渡から出ると、
死にそうになるよ。
あー、来ると何となく分かっていた。
でも、それでも私は。
そう悪~い顔で笑う春渡に、今回ばかりは笑った。
どっかのだれかさん…か。
いや、もう嫌われた可能性あるのに奪うとか言うなって…
その言葉は、いつも騙される様な話し方じゃなかった。
少しムカついた様な、本心みたいな。
私は春渡の大きな背中を叩いてまた走った。
あー、これが青春ですかね神様。
なんて考えたら自然に口角が上がった。
でね、丁度。見つけちゃったんだよね。
ムカつくし、春渡並じゃないけど、腹立つけど、
優しくて、面白い、アイツを。
そのアイツが私は好きだから。
だから、振り向いて。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。