第26話

春渡の話
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2019/10/18 15:05
そして、朝。


あきのんと登校したけど、春渡は見かけなかった。


会わなくて良かったなんて、心の隅では思ってる。


けど、謝りたいのが本心。
…と、いうことで


机に肘をついて、その手を組み、


目は死んでいると思われる。
こうして〝今〟に至る。
そして、結局放課後まで話す機会は無かった。
そして、皆わらわらと帰り始める。


まだ間に合うかな…と、急いでカバンを持って、


下駄箱へ走った。
すると、
村島 秋乃
村島 秋乃
あなたっ!アイツなら今、
一人で帰ったから!
あきのんは外を指差して、行ってこいと、


笑ってくれる。あーあきのんが男だったらな。


ソッコー彼氏にしてたっつの!!


アイツというのは、きっと春渡かな。


そしてあえて皆の前で、


名前を出さないイケメンあきのん。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
ありがとう!
と、歩くのも速い春渡にやっと追い付いて、
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
春渡っ…!
もう疲れて何話すか忘れそうだわ…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あなた?え?走ってきたの?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
速いんだよ歩くのがよぉ…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
ごめんごめん(笑)
やっぱこのノリが大好きだもん。


走ってきたし、呼吸を整える。


そして、春渡の顔を見る。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
じゃなくて、春渡、昨日はごめん。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あー、ううん、僕も考え無しに冬木に対抗しようとして、
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あなたのこと好きなのに、大切にしたかったのに、逆に傷付けた。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
うっ………
『好き』という単語が春渡から出ると、


死にそうになるよ。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
で、こんな所で悪いけど、
谷澤 春渡
谷澤 春渡
僕と付き合いませんか?
あー、来ると何となく分かっていた。


でも、それでも私は。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
──っ!ごめん!春渡!
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あー、だよねー。(即答)
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
はぁー?まだ何も言ってないんですけど。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
うん、何となく分かってる。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
でも、
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
『友達でいたい』
谷澤 春渡
谷澤 春渡
『友達でいたい』
谷澤 春渡
谷澤 春渡
でしょ?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…!!!そう!
谷澤 春渡
谷澤 春渡
あのさー、
僕諦め悪いの知ってるでしょー?
谷澤 春渡
谷澤 春渡
隙あらばどっかのだれかさんから奪うから、覚悟しててね?
そう悪~い顔で笑う春渡に、今回ばかりは笑った。


どっかのだれかさん…か。


いや、もう嫌われた可能性あるのに奪うとか言うなって…
谷澤 春渡
谷澤 春渡
うわ、笑うの最低~。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
あ!やば、行かなきゃ。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
冬木のところ?
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
よく分かっていらっしゃる!!
谷澤 春渡
谷澤 春渡
冬木の家の方から回った方が早いよ。
その言葉は、いつも騙される様な話し方じゃなかった。
少しムカついた様な、本心みたいな。
夏瀬 (あなた)
夏瀬 (あなた)
…ありがと春渡!
私は春渡の大きな背中を叩いてまた走った。
谷澤 春渡
谷澤 春渡
いった。はいはい、気を付けて~。
あー、これが青春ですかね神様。
なんて考えたら自然に口角が上がった。
でね、丁度。見つけちゃったんだよね。
ムカつくし、春渡並じゃないけど、腹立つけど、


優しくて、面白い、アイツを。


そのアイツが私は好きだから。


だから、振り向いて。

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