探すのにも疲れてきてしまった。
終わりのない夢を見るのはやめたほうがいいのかもしれない。
そう思ったのは、あの公園を抜けてから、3年が経とうとしていた時だった。
3年間、1日も探すことを止めた日はなかった。だけれど、ふと思ってしまった。このまま追い求めたとしても、結局あの人に会うことなどなく、哀れに死んでいくだけなのではないかと。
ぼろぼろの布切れのように。あの、会場で、使えなくなった商品のように死んでいくと思うと、背筋が凍った。
嫌だった。まだ死にたくないと思った。
もう、私は永遠に、普通の女の子に戻ることなんてないかもしれない。いや、もう出来ない。そのチャンスを私は、当の昔に捨ててしまった。ぐしゃぐしゃにして、何度も切り付けて。
逆に言えば、私にはもう失うものがなかった。身内もいなければ、大切な人すらいなかった。ならば、好き放題できる。そう考えた。
そう考えなければ、頭が狂いそうだったからだ。
夢を何度も見る。
血の匂い、錆びた赤いロザリオ、拳銃、包丁、誰かの叫ぶ声。
私は悪くない、何にも悪くない。最近まではずっとそう思っていた。だけど、本当にそうなのかな。
それは私が作った都合のいいことで、本当は私だけが悪いのかもしれない。
あの、施設に入れられたのも、ひどい仕打ちを受けてきたことも全部。
わたしのせいなのかもしれない。
わたしがずっと、ワルイコだったからなのかもしれない。
施設のひとは、ワルイコを何よりも嫌ってた。言うことを聞けない子、暴れる子、嘘を吐く子、逆らう子。昔の私も、たくさんたくさん、悪いことをした。施設の人が大嫌いで、何回も悪いことをした。
だからなのかもしれない。ずっと私に殴ったり、けったり、首を絞めたりしてきたのはきっと。
わたしが、_ワルイコ_だったから?
じゃあ、私は最初から、普通の女の子なんかじゃなくて、ただの、ワルイコだったの?私がどんなに普通の女の子になろうとしたって、どんなにあの人追い求めたって、私はずっと変われない?
嘘だ。
嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だうそだうそだうそだウソダウソダウソダウソダ………………………
全部、嘘だ。
じゃあ、私は今まで何のためにこの体を捧げてきたの?私がこんなにも必死になってきた意味は?きっとカミサマはこう言うんでしょう?
「お前が一人でやったことだ」
って。私一人のせいにするんでしょう?私が結局、全部の元凶なんでしょう?
私さえいなければ上手くいったとか、私がこんな事望まなければとか、全部、ゼンブ!!私のせいになる。
夢を追う私は、普通の少女にはなれないの?
わたしは ずっと ワルイコ なの ?
考えることが億劫になって、私は何も考えないことにした。
これ以上考えたら、頭がおかしくなって、普通じゃいられなくなる気がしたから。また、あの時みたいに、自分勝手な悪いことをしちゃうといけないから。だけど、やめたら、体が空っぽになった。
命が吹き込まれてない、操り人形みたいになった。
………
……
…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!