私たちは肉を食べなきゃ生きていけない体だった。
しかも、人のお肉を食べなきゃいけなかった。
私たちを生んだお母さんは、お父さんのせいで、そういう体にされちゃったんだって言っていた。
お父さんは、俺たちにも手を出した。
もともとの人格を壊して、子供のころから成長できなくなった、リサ。人を苦しめることでしか、喜びを得ることができなくなった、リア。
お父さんは最初から、私達に興味なんて持ってくれなかった。
最初から、私じゃなくても、頭がいじれる、簡単で単純で、純粋な子供ならば。何でもよかったんでしょ。
お母さんからすべてを奪わなくたって、良かったはずなのに。
リアからも、お母さんからも、全てを奪ったくせに、なんであの人だけ、善人の皮をかぶって、かぶって、生きていられるの?
全てを知っている自分だからこそできることがあるの。
リアは、私と違って成長しているから、悪い事とかの区別がつく、偉い子だもんね。
でも、私はあのころから成長してないの。ずっと。私だけ時が止まったみたいに。
ずっと、わたしはこどもだから。あなたがきずつくようなことを、平気でできるの。
腐敗した体を、もうたべなくていいんだよ。
これで、たべるのさいごにしようね。
足を進めた先に、いたのは醜い父親。
白衣を赤に染めて、何を食べているの?
おかあさんのかたみのロザリオにぎりしめて、
「ただいま」って笑うの。
おかあさんは、こうやって笑うと、とってもよろこんでくれたのよ?おとうさん。
なんで?みたいな、かおしないでよ。
そんなこわいものむけないでよ。
わたしがこうやってもどってきたのは、あなたのせいなんだよ?
わたしはずっと、ずっと、お父さんのことを、こころのなかではびかしてたんだよ?
綺麗な思い出にして、じぶんをこわさないようにしたのに。したのに。
おとうさんはそれをじぶんのてでこわしたんだよ?
あとずさったって、もうにげられないことくらいわかってるくせに。
今更逃げようたって、おうじょうぎわがわるいよ。
リアも、私も、お母さんも、みんなむこうでまってるんだよ。
だからおとうさんも、早くあっちに行かないと。
ね、
お と う さ ん
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!