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第1話

プロローグ 雨
28
2021/02/18 07:58
 ポツポツポツ…

 冷たい雨が、頬を滑る。
 

 冷たくて、冷たくて。心地よくて。

 雨のせいで濡れた手が、水滴まみれで気持ちが悪い。だけど今は、やらなきゃいけないことがある。倉庫に立てかけてあるスコップを取り出した。


 ザク…ザクザク…

 雨で柔らかくなった土、スコップを刺せば形を安易に変える。


 その中に、動かなくなった人形を埋める。
 ちゃんと、貴方が大好きって言ってたあのお花も埋めておく。

 
「これでさみしくないでしょう?」


誰に言うつもりもない、独り言が乾いた喉を通る。

 最期は、お別れは、笑顔でっていうつもりだったのに。何でか、だんだん息が荒くなっていく。苦しい。周りは、誰もいない。居るはずがない。

 居ない場所をわざわざ選んだのだから。

 
「あ、あぁ。ああ…」


 耳鳴りがする、頭痛がする。

 ぬかるんだ土に足を取られる。尻もちをついて、倒れてしまう。だけどそんなこと関係なかった。怪我をしたわけじゃない、なのに、手が土の色が混ざった赤色。

 私は悪くない。

 ねぇ?そうでしょう?

 土に埋まっている、人形に視線を投げかける。

 だが、すぐにやめて、走ってその場を後にする。怖い。今はこの状態を見られるのが一番怖い。雨が体中を刺しているような感覚がある。



 あの忘れもしない夜に、私は、人を刺して、


 生きたまま埋めた。

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