第4話

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2021/02/22 14:15
 雨が降る。
 頭が痛い。

 親がいない子は、みんな孤児になるらしい。教養がない私には、特別な場所に連れていかれた。

 知らない場所、知らない人、知らない物。
 色々なものがあった。だけど心の中にあるのは、あの夢の人だけ。その人だけ。どれだけほかの人に愛されようが、私は全く何も感じなかった。

 私は、あの人に愛されたいのに。

 だけど、本当にその人が見つかるなんて確信もないのに。夢を見るバカは私自身なのかもしれない。ずっと叶いもしない夢を追う私は、遠くから見れば私は、バカな少女なのだろう。だけど私は、あの人を探しに、施設を出た。

 寒い、冷たい雨が頬を伝う。裸足のまま、唯一持っているのは、あの時のロザリオ。赤く染まった、あのロザリオ。鉄の匂いがする、あのロザリオ。
 胸に下げたまま、時々金属音を奏でる。

 だけど、それすらも雨の音にのまれた。時々暖かい雨が頬を伝った気がしたけれど、やっぱり気にしなかった。私には時間がないから。
 一分一秒も無駄にしたくないから。
 
 ねぇ、×××。
 私は、悪くないよね?確かに、大人の言うことは聞かないし、施設だって勝手に抜け出したけど、私は健全な夢を追いかける少女だもんね?

 私がいくら、願ったところで私は…自由にはなれないんだからさ。

 雨の中、どこか分からない橋の下で私は寝ていた。体が酷い倦怠感に襲われる。頭がいたい、寒い、体が重い。動きたくなんてない。だけど、動かなくちゃいけない。
 自分の今の原動力は、夢なんだ。あの人を見つけるためだったら何でもできる。たとえ、いくら傷つこうとも、あの人を見つけるまでは、死ねない。
 酷く重い体を起こす。雨が止んだ後の空はひどく晴れていた。寒くて、寒くて。

 嫌になった。
 雪が降ってる。
 子供たちが遊んでる。

 なんの手がかりもないのに、私は知らない街を歩いていた。歩く度、足の裏にできたしもやけが悲鳴を上げた。だけど、気にしなかった。町を歩く男の人の顔を一人一人見分けていく。何回も、何回も。
 だけど、だけど、どんなに時間をかけたって、どんなに人の顔を見たって、あの人のお顔はなかった。
 そんな時、見知らぬ大人が、声をかけてくれた。
 
「こんな寒い中、どうしたんだい?」

 にっこりと笑う、その人の顔も違ったけれど、何時かに見た絵本の登場人物のような顔をしていた。真っ白なお鬚、真っ白な髪の毛。赤い服。それが何だったか思い出せないけれど、心があったかくなる。
 この人は信用していいかもしれない。そう思って、全部を話した。

「知ってるよ、その人のこと」

 そう言われた。行く当てがなく、何も覚えてない私にとっては、その人が神様のような存在に見えた。ニコニコと笑うその顔に、信用した。

 暖かい服に、暖かい食べ物、しもやけや、ケガが目立つ場所には包帯など、手当てがされた。今まで覚えている中で、こんな優遇をされた覚えがなかった。だけど、この部屋には、暖かいものが詰まっていた。
 
 ふわふわ、あったかい、
 
 ぽかぽか、おちていく、

 しあわせ、いっぱい、

 だけど、何かが足りない

 なにか、たりない

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