第13話

雫と先輩
2年生になって、早いもので1ヶ月が経った。

5月に入って、もうすぐ本格的に体育祭の練習が始まろうとしている。
中村 千香子
中村 千香子
あれ?
今日だっけ、実行委員の集まり
松本 雫
松本 雫
……うん、そう
森田 紘
森田 紘
バカだよなー
あの状況であくびとか!
松本 雫
松本 雫
あー!
あの時に戻れるなら戻りたいよ〜
渡辺 稔
渡辺 稔
まぁ、諦めも肝心だって
頑張ってこいよ
松本 雫
松本 雫
他人事だと思って〜!
───そう。

体育祭実行委員を決めるHRの時間、だーれも立候補しないせいで困り果てていた担任と、睡魔に耐えかねてあくびを1つ零した私。

バッドタイミングで目が合って、やばい!と思った次の瞬間には「じゃあ、松本頼むわ!」なんて軽いノリで、うちのクラスの体育祭実行委員に選抜されてしまったのが先週のこと。

今日は、これから体育祭実行委員の初顔合わせとも言える集まりがある。
森田 紘
森田 紘
んじゃ、3人で
遊びにでも行こうぜ〜
渡辺 稔
渡辺 稔
お、いいね〜
松本 雫
松本 雫
はぁ!?ズルい!
森田 紘
森田 紘
それもこれも全部
自分のマヌケさが招いたことだろ
松本 雫
松本 雫
誰がマヌケなのよ!!
森田にだけは言われたくないっ
キーキーと怒りに震える私を”まぁまぁ!”なんて、ちかちゃんが止める。

相変わらず、森田とはこんな感じで暇さえあれば言い合いばっかりだけど、前みたいな関係に戻れてホッとしてる。

……とは言え、森田を好きな気持ちは薄れるどころか日に日に大きくなって。やり場の無い気持ちに困っている。
渡辺 稔
渡辺 稔
口ではこんなこと言ってても
松本が一緒じゃないことを
1番寂しがってんのは紘だから
森田 紘
森田 紘
……っはぁ!?
なんでそうなるんだよ
松本 雫
松本 雫
へぇ〜?ふぅん?
森田くんったら、そうだったの?
ごめんね?寂しい思いさせちゃって
森田 紘
森田 紘
おっまえな!!
その顔、マジでムカつくからやめろ!
前はもっと簡単に次の恋が出来たのに。
なんでだろう……、今までの恋とは何もかもが違う気がしてる。
【3-1の教室】


体育祭実行委員会は、3年生の教室で行われることになっている。

みんなと別れたあと、1人やって来た3-1の教室。

普段過ごし慣れていない空間に戸惑う気持ちと、みんなが遊びに行く中、自分だけ委員会なんてツイてないっていう憂鬱な気持ちが、私を教室に入るのを躊躇わせる。
松本 雫
松本 雫
ふぅ……
早く終わったら合流しよ
そんな独り言を漏らしながら、空いてる席に適当に座った。
───ガタンッ
松本 雫
松本 雫
っ!!
隣の席のイスを引く音がやけに響いて、少しだけ肩が跳ねる。人が座る気配に、ゆっくり顔を向ければ、
伊藤 翔平
伊藤 翔平
久しぶり
私を見て優しく微笑むその人に、驚きすぎて目を見開くことしか出来なかった。
松本 雫
松本 雫
……な、
なんで、伊藤先輩がいるの!?
しかも……他にも席空いてるのに、なんてわざわざ隣なの!!

気まずい、気まずすぎる……!!

目の前にいるのは紛れもなく、伊藤翔平先輩。
毎朝、待ち伏せして挨拶していた伊藤先輩。
彼女が沢山いるって知って、勝手に失恋した伊藤先輩。

言ってしまえば、森田と”もう恋なんてしない同盟”を結ぶきっかけになった人だ。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
元気だった?
松本 雫
松本 雫
あ、えっと……はい!
先輩もお元気そうで
伊藤 翔平
伊藤 翔平
そう?俺は元気でもないよ
松本 雫
松本 雫
……えっ?
伊藤 翔平
伊藤 翔平
毎朝、俺に会いに来てくれてた
可愛い女の子がいたんだけど
最近、会いに来てくれなくなってさ
松本 雫
松本 雫
……っ、へ、へぇ?
……それ、完全に私のこと!?
いやでも可愛い女の子って……違う人?

からかわれてるのかな、これ。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
……もう、俺のこと
飽きちゃったんだ?
松本 雫
松本 雫
へ……?あ、飽きる?
伊藤 翔平
伊藤 翔平
少なくとも俺は、
ずっと松本のこと待ってたよ
松本 雫
松本 雫
……っ、
見つめられると、胸が痛い。
トキメキとは違うなんとも言えないドキドキに呼吸の仕方を忘れそう。

誰か助けて……!
は、早く始まれ委員会〜〜〜!!