第17話

先輩の告白
体育祭は嵐のように過ぎ去った。

総合優勝は逃したものの、準優勝を勝ち取り、来年は絶対優勝しよう!ってクラスみんなで盛り上がったりして。

もちろん、私は体育祭実行委員としての役目も果たして伊藤先輩とのペアも解消。

……の、はずなんだけど。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
移動教室でたまたま
近くを通ったから顔見に来た
松本 雫
松本 雫
朝は自販機に行くついで、
お昼は購買に行った帰り、
……今度は移動教室ですか
もう接点すらなくなると思っていた伊藤先輩が、なぜか何かと理由を付けては私を訪ねてくるようになった。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
フッ、雫の顔みたら次の時間も
頑張れそうな気がしてきた
伊藤 翔平
伊藤 翔平
じゃあ、また来る
雫も頑張ってね
松本 雫
松本 雫
……っ、はい
癖なの?ってくらい、慣れた手つきで私の頭を撫でながら柔らかい笑顔だけ残して去っていく伊藤先輩を見送る。

……いつからだろう?気づけば伊藤先輩は私を"雫"と、サラッと下の名前で呼ぶようになった。
中村 千香子
中村 千香子
なに?実は付き合ってる?
松本 雫
松本 雫
っ!?何言ってんの、
そんなわけないじゃん
中村 千香子
中村 千香子
だって伊藤先輩、ココ最近
我が物顔で雫に会いに来るし
中村 千香子
中村 千香子
サラッと名前呼びだし?
渡辺 稔
渡辺 稔
体育祭が終わっても松本との
接点がなくならないように
頑張ってる感あるよな〜
渡辺 稔
渡辺 稔
俺的に伊藤先輩は
松本に気があると思うな
松本 雫
松本 雫
やめてよ、2人とも〜!
ないない!ありえないって
あの伊藤先輩が私を好きなんて、夢物語すぎて笑っちゃうよ。

ちょっと体育祭で仲良くなれただけ。
それ以上も以下もないのに。
森田 紘
森田 紘
あんな女タラシに
好かれても仕方ねぇだろ
中村 千香子
中村 千香子
雫は変なとこ鈍感だからな〜
いいの?森田。
このままじゃ雫、取られるよ
森田 紘
森田 紘
……は、俺?
取られるも何も
別に俺のじゃねーし
冗談半分のちかちゃんの言葉に、森田は少しだけ面倒くさそうに答える。

"別に俺のじゃねーし"

分かってはいても、内心ショックだな。
松本 雫
松本 雫
そ、そういう2人こそ!
実は付き合ってたりしないよね?
いつも冷やかされてばっかりだから、たまには仕返しと言わんばかりにちかちゃんとみのっちをニヤニヤと見つめる。
中村 千香子
中村 千香子
……っちょ、何言ってんの
渡辺 稔
渡辺 稔
俺は、いつか中村と
そうなれたらいいなって思ってるよ
中村 千香子
中村 千香子
えっ、
森田 紘
森田 紘
稔、それ……!
松本 雫
松本 雫
……ほぼ告白じゃん
渡辺 稔
渡辺 稔
俺、回りくどいの嫌いなんだよ
渡辺 稔
渡辺 稔
他に取られてからじゃ遅いし
常に気持ちぶつけてくスタイル
渡辺 稔
渡辺 稔
だから早いとこ振り向いて
くれると嬉しいんだけど
中村 千香子
中村 千香子
〜〜っか、考えとく
……前向きに
ちかちゃんの返事に"マジで?"と嬉しそうに笑うみのっちは、本当にちかちゃんが好きなんだろうな。

対するちかちゃんも、見たことないくらい顔を真っ赤にして、すごく女の子な顔してる。

この2人には、早く幸せになって欲しいな。
【カフェ】
松本 雫
松本 雫
あの、先輩
それで話って?
放課後、生徒玄関で私を待っていた伊藤先輩に誘われて近所のオシャレなカフェに来た私は、先輩と向かい合わせに座っている。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
俺、今まで色んな女の子と
付き合って来たけど……。
いつもどっかで本気の恋を探してた
松本 雫
松本 雫
え……?
伊藤 翔平
伊藤 翔平
最初は"毎朝俺のこと待ってる子"で。
いつからか、パタッと来なくなって
……そしたらすげぇ気になって
伊藤 翔平
伊藤 翔平
だけど、自分から追いかけるとか
今まで1度もなかったから戸惑った
松本 雫
松本 雫
先輩……っ
伊藤 翔平
伊藤 翔平
体育祭実行委員の集まりで
雫のこと見つけたときは
内心すげぇ、嬉しかったんだ
伊藤 翔平
伊藤 翔平
俺、雫が好きだよ
初めて、自分から人を好きになった
松本 雫
松本 雫
……っ!!
伊藤 翔平
伊藤 翔平
雫、俺と付き合って欲しい
先輩の真剣な瞳に射抜かれて、目がそらせない。ドキドキと加速していく心臓は、正直で。先輩の気持ちを嬉しいと思っている自分がいる。

ふと、脳裏をよぎる森田の顔。

……私のことなんか、これっぽっちも好きじゃない森田より、伊藤先輩をまた好きになれたら幸せなのかもしれない。

そんなことを思いながら、真っ直ぐに先輩を見つめ返した───。