第12話

今まで通りのふたり
森田 紘
森田 紘
結構深いな……
血が止まんねぇ
松本 雫
松本 雫
もういいよ
自分で押さえとくし!
私の指をギュッと握りしめて止血する森田に、申し訳なさから早口になる。
森田 紘
森田 紘
手、心臓より高くあげとけ
言いながら、私の手を心臓よりも高い位置へと誘導する森田。どうやら、手を離してくれるつもりはないらしい。

清潔な水で手を洗われて、救急箱にあったガーゼの上から強く傷口を押さえられているだけなのに、ドキドキとうるさい心臓が嫌になる。
松本 雫
松本 雫
……ありがとう
森田 紘
森田 紘
……じゃがいも剥くの
壊滅的にヘタクソだし
森田 紘
森田 紘
見てるこっちが
ハラハラするんだよ、お前
松本 雫
松本 雫
なっ、壊滅的……って
松本 雫
松本 雫
てか、いつ見てたのよ
全然、そんな素振りなかったくせに。
森田 紘
森田 紘
案の定、ケガしてるし
松本 雫
松本 雫
すみませんね!
不器用で……
ギュッと押さえていた手を離して、恐る恐るガーゼをめくった森田が”よし”と小さく呟いて、新しいガーゼに取替えてくれる。

私なんかよりずっと器用な森田の新しい一面を知ってしまった。
森田 紘
森田 紘
とりあえず、これで大丈夫だろ
松本 雫
松本 雫
こ、こんなガーゼしてたら
じゃがいも剥けないよ
森田 紘
森田 紘
まだ剥く気だったのかよ
あんな壊滅的なくせに
松本 雫
松本 雫
……もう!!
確かに、得意じゃないけど
森田 紘
森田 紘
……冗談だよ
ケガしてんだから剥かなくていい
黙ってみんなが剥いてんの見とけ
松本 雫
松本 雫
そ、そんな……!
私だって手伝いたいし
森田 紘
森田 紘
またケガされたら嫌なんだよ
分かったら、何もすんな!
……心配してくれてるのか、バカにされてるのか。どっちとも取れる森田らしい言葉に、私は何も言えなくなってしまう。
森田 紘
森田 紘
じゃ、俺は残りのじゃがいも
剥きに行ってくるから
それだけ言って私に背を向けた森田。
松本 雫
松本 雫
森田……!
私は、咄嗟に呼び止めていた。
森田 紘
森田 紘
……ん?
松本 雫
松本 雫
好きとか
……やっぱ、なしで!
森田 紘
森田 紘
は?
松本 雫
松本 雫
ほら!
森田と気まずいままだと
ちかちゃんとみのっちにも悪いし
松本 雫
松本 雫
それに、森田とバカ騒ぎしないと
……なんか、変な感じなんだよね
森田 紘
森田 紘
松本……
松本 雫
松本 雫
勝手なことばっか言ってごめん
だけど、今までみたいに、また
”友達”として仲良くして欲しい
森田の返事が怖くて、心臓が変にドキドキする。

だけど、次の瞬間。
私の目を真っ直ぐに見て、森田がフッと小さく笑った。
森田 紘
森田 紘
俺も
松本 雫
松本 雫
え……
森田 紘
森田 紘
やっぱ松本いねぇと
……つまんねぇ
松本 雫
松本 雫
森田……
ニッと笑った森田に、嬉しくて泣きそうになるのを必死にこらえる。

もちろん、今はまだ森田を好きって気持ちが消えたわけじゃないけど、少しずつ友達に戻れたらいいなって思う。

だって、やっぱり森田がいてくれる毎日が私は好きだから。
【海辺】
私の手当を終えて、再び海辺に戻った私と森田を見たちかちゃんとみのっちは驚いたように顔を見合わせた。
中村 千香子
中村 千香子
もう、散々心配させといて
あっさり仲直りしてるんだから
渡辺 稔
渡辺 稔
まぁ、まぁ。
良かったじゃん?
これでやっと廃人森田とお別れだ
森田 紘
森田 紘
誰が廃人だよ
松本 雫
松本 雫
森田なんて
基本スペックが廃人じゃん
森田 紘
森田 紘
はぁ?
言わせておけば、お前なぁ!
松本 雫
松本 雫
本当のことじゃん!
森田 紘
森田 紘
廃人に手当してもらったお前は
廃人以下ってことだな?
松本 雫
松本 雫
そ、それとこれは別でしょ?
渡辺 稔
渡辺 稔
全くお前らは
仲直りしたと思えばこれだ
中村 千香子
中村 千香子
フフ、でもやっぱり
アンタたちはそうじゃないとね!
ちかちゃんとみのっちの言葉に、私と森田は顔を見合わせて、どちらともなく笑い合う。
森田 紘
森田 紘
……さってと、
じゃがいも剥くか〜
松本 雫
松本 雫
あ、私も剥く〜
森田 紘
森田 紘
お前はケガしてるから
黙って見とけっつっただろ
松本 雫
松本 雫
や〜なこった〜
そこにはもう、いつも通りの私たちがいた。