第14話

本気で好きになれる子?
体育祭実行委員同士が2人1組になって準備作業から当日の運営までを行うことになったのはいいけれど、

ペアの決め方は、3年生が組みたい相手を指名するという不公平にも程があるものだった。

おかげで、何を考えているのか読めない伊藤先輩に指名されてペアを組む羽目に……。
松本 雫
松本 雫
……なんで私なんですか
伊藤 翔平
伊藤 翔平
え?理由とかいる?
んー、そうだな……
強いて言うなら気になるから
松本 雫
松本 雫
き、気になるって……
先輩、彼女いますよね!
伊藤 翔平
伊藤 翔平
いないよ
全員、バイバイしたから
松本 雫
松本 雫
……え
なんて事ないみたいにサラッと告げられて、私はフリーズしてしまう。

だって、ちかちゃん情報によれば伊藤先輩は彼女が途切れたことなんてなくて……、おまけにいつも複数人と付き合ってて……。

それなのに───。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
うわぁ、その顔。
もしかして信じてない?
松本 雫
松本 雫
し、信じてないわけじゃ……
伊藤 翔平
伊藤 翔平
まぁいいよ。
少しずつ、距離縮めてくから
松本 雫
松本 雫
え……それって、私とですか?
伊藤 翔平
伊藤 翔平
他に誰がいんの?
よろしくね、松本
恋は盲目。
先輩を好きだった頃は、とにかく先輩がキラキラ輝いていて、先輩の一言一言にドキドキした。

だけど、今は───。
どこまでも読めない伊藤先輩を前に、困惑120パーセントだ。
【3日後】
中村 千香子
中村 千香子
で?伊藤先輩とはどうなの?
松本 雫
松本 雫
な、なにが!?
中村 千香子
中村 千香子
毎日一緒に過ごすうちに
また気持ちが戻ってきたりしないの?
渡辺 稔
渡辺 稔
確かに、気になる……
松本 雫
松本 雫
いやいや!ないから!
ないない、ありえない!
中村 千香子
中村 千香子
なんで?
毎朝待ち伏せまでして
好き好きオーラ全開だったくせに
松本 雫
松本 雫
そっ、それは……
毎日のように実行委員の仕事で一緒に過ごす時間がある私と先輩だけど、このところ、伊藤先輩は私をからかって遊んでばかり。

それは人前だろうとお構いなしで。
廊下を歩いているところを突然後ろから抱きしめられたり、不意に優しく頭を撫でられたり。

もちろん1度は憧れた人だし、仲良くなれたって意味では距離が縮んだ気がして嬉しいけど。

チラリ、森田を盗み見れば、興味なさげにそっぽを向いたまま目すら合わない。
中村 千香子
中村 千香子
じゃあ、ドキドキしないの?
先輩と一緒にいて
伊藤 翔平
伊藤 翔平
面白い話してんね?
それ、俺も気になるな〜
松本 雫
松本 雫
!?……せ、先輩!
突然、ちかちゃんの後ろらヒョコッと顔を出した伊藤先輩に思わず固まる。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
何その幽霊でも見たような顔
松本 雫
松本 雫
だって、ビ、ビックリして……
中村 千香子
中村 千香子
神出鬼没すぎる……
伊藤 翔平
伊藤 翔平
面白い話が聞こえたからさ。
で、松本は俺といてドキドキするの?
松本 雫
松本 雫
……っ、し、しませんよ!
伊藤 翔平
伊藤 翔平
うわ、即答?傷つくー
なんて言いながらも先輩は楽しそうに笑っている。……やっぱり読めない人。
松本 雫
松本 雫
もう、からかうのも
いい加減にしてください!
伊藤 翔平
伊藤 翔平
案外そうでもないよ
俺、やっと本気になれる子
見つけたかも……
渡辺 稔
渡辺 稔
ワーオッ
松本 雫
松本 雫
……本気になれる子?
なんですか、それ
意味深に微笑む先輩の言葉の意味が分からなくて首を傾げる私に、みのっちは"なんで分かんないんだ!"って顔をした。
伊藤 翔平
伊藤 翔平
ま、この話はまた改めて
またね、松本
ポンポンッと柔らかく私の頭を撫でて、不敵に笑って去っていく伊藤先輩は相変わらずかっこいい。

だけど、やっぱりあの頃みたいなトキメキを感じることはない。
中村 千香子
中村 千香子
……雫、モテ期?
学校のプリンスに好かれるなんて
渡辺 稔
渡辺 稔
あれは完全に
松本のこと狙ってたな……
松本 雫
松本 雫
いやいや、何言ってんの2人して!
絶対、ないから!
ちょ、森田からも何か言ってやってよ
森田 紘
森田 紘
……はぁ
松本 雫
松本 雫
え?なに?
森田 紘
森田 紘
なんでもねぇ!
それより腹減った、早く帰ろうぜ
……絶対、何か言ったのに。

そんなことを思いながら、私は少し前を歩き出した森田の背中を追った。