森田と"もう恋なんてしない同盟"を結成した翌日。
私と森田は早速『失恋の傷を癒す会』と題し、
2人で近所のカラオケにやってきた。
テストが終わったあとはいつも、ちかちゃんとみのっちも一緒に4人でカラオケに行くことも多いけど。
考えてみたら、森田と2人で遊ぶのはこれが初めてかもしれない。
始めはほんの少しだけソワソワと落ち着かない気持ちを抱えていた私だったけれど、対する森田はいつも通りの気さくな雰囲気で。
そのおかげか、気付いたら私もすっかりいつもの調子で、純粋に森田との時間を楽しめてる。
森田は、私が入れたABYSSのデビュー曲のイントロが流れ出した瞬間、目を輝かせた。
私の言葉に嬉しそうに頷いた森田はすかさず"歌い直し"ボタンを押して。
再びABYSSの曲が流れたのを合図に私たちはノリノリで歌った。
〜数時間後〜
2人であれこれ歌い尽くして、カラオケを出た頃にはもうすっかり夕方になっていた。
そう言って森田が指さしたのは、デパートの外に貼られた大きな広告。
私が目を輝かせたのを見て、森田がニッと笑う。
胸の辺りを押さえて、痛みを訴えだした森田を小さく笑いながら、スタスタと歩くスピードを速める。
後ろから小走りに追いついた森田が、不満そうに膨れるのを横目に、森田と過ごす時間に居心地の良さを感じている私は、
案外、失恋の傷はすぐに癒えるかも?
……なんて思っている。
先輩に彼女がいるって知った時のショックはあんなにも底知れないものだったのに。
───やっぱり、恋より友情なんだ。
友達ってサイコー!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。