第18話

森田side.
中村 千香子
中村 千香子
そんなに嫌なら
なんで引き止めなかったのよ
森田 紘
森田 紘
……は?
渡辺 稔
渡辺 稔
"松本と先輩のことが気になって
気が気じゃない"って顔に書いてる
森田 紘
森田 紘
……うっせぇな!
書いてねぇし、気にしてねぇよ
いつものファミレス。
いつものレモンスカッシュ。

足りないのは、いつもなら向かいの席にいるはずの松本。

中村と稔の言葉には、内心心当たりがありまくる。

放課後、先輩に誘われて呑気に"また明日"と帰って行った松本の後ろ姿を思い出すと、胸の辺りが苦しくなる。
中村 千香子
中村 千香子
いい加減、認めなよ
森田 紘
森田 紘
認めるって……何をだよ
ずっと頭ん中がイライラ、モヤモヤしてる。
その理由を考えれば、辿り着くのは松本の存在で。

だけど、松本に対してイライラしてんのかと言われたらまた別で。
渡辺 稔
渡辺 稔
本気で気付いてないのか?
……すげぇな
森田 紘
森田 紘
は?だから、何が!?
中村 千香子
中村 千香子
森田にとって、雫ってどんな存在?
森田 紘
森田 紘
……どんな、って
好きなやつコロコロ変わって、すぐ失恋して、なのにいつも楽しそうで。

俺とは喧嘩ばっかなのに、何だかんだ一緒にいるのが当たり前で。……かと思えば、俺のこと好きと言い出したり、友達に戻りたいって言ってみたり……。

振り回されっぱなしで、乱されまくりで。

だけど、離れてると気になって。
目で追って、心配して、側に置いておきたいって思う。俺の目の届くとこに、いて欲しいって……。
森田 紘
森田 紘
……っ、
中村 千香子
中村 千香子
どう?気付いた?
森田 紘
森田 紘
は?……なに?
俺って、アイツのこと好きなの?
渡辺 稔
渡辺 稔
あー、長かった〜
紘が答えに辿り着く前に卒業式
来たらどうしようかと思った
森田 紘
森田 紘
……え、マジで!?
中村 千香子
中村 千香子
だって、森田
伊藤先輩に雫とられたら
嫌じゃないの?
……伊藤先輩。
女タラシだから、松本に近づかれると腹が立つんだと思ってた。

また泣かされたらって思うと、心配だったし。馴れ馴れしく触られてんのも、ムカついた。

……サラッと下の名前で呼んでるし。
俺だって、呼んだことねぇのに。
森田 紘
森田 紘
やだ。
……無理、絶対
中村 千香子
中村 千香子
やっと認めた
鈍いんだか、頑固なんだか
伊藤先輩に感じるイライラと、頭の中のモヤモヤは全部、嫉妬ってことか……。

他の男と一緒にいんのを見るのが嫌だって思うのは、俺が松本を好きだから。

なんだ、そっか。
俺、松本が好きなんだ。
森田 紘
森田 紘
……でも!!
今さらなんて言うんだよ
俺、アイツのこと……
"松本のことは、大事な友達だと思ってるから"とかカッコつけたこと言って、振ったよな。
渡辺 稔
渡辺 稔
過ぎたことは仕方ねぇだろ
素直に自分の気持ちぶつけて
早いとこ先輩から取り返して来いよ
中村 千香子
中村 千香子
でも、今頃あの2人
付き合っちゃってたりして
───ドクンッ

中村の言葉に心臓が嫌な音を立てる。
渡辺 稔
渡辺 稔
あー、確かに
良い感じだったもんな〜
中村 千香子
中村 千香子
自覚した瞬間に失恋なんて
悲しいね〜、森田
森田 紘
森田 紘
ま、まだ分かんねぇだろ!
やっと、自分の気持ちに素直になれそうだってのに、他の男なんかに取られてたまるか。

……それに、勝手だけど。
松本が好きなのは、まだ俺だって信じたい。

こうなったら、当たって砕けろだ!
森田 紘
森田 紘
……俺、松本んとこ行ってくる!
勢いよく立ち上がって、テーブルの上に千円札を叩きつけた。

背中を押してくれた2人の"頑張れ"を背中で聞きながら、俺の足は自然と急いでいた。

───早く、松本に会いたい。