あなたと涼太のデートの制限時間はあっという間に過ぎていった。
今年も涼太と屋台を見て回れて、あなたは大満足だ。
しかし涼太の方は、この後あなたが廉とデートするのかと思うと胸が苦しくなる。
涼太の中で、あなたを誰にも渡したくないという願いがどんどん強くなっていく。
だから…気づけばその気持ちが唇の先から溢れていた。
あなたは冗談を言われているのだと思って、涼太に駆け寄りその手を引いた。
だけど予想とは違って涼太の表情は真剣そのもの。
あなたは涼太がどうしてそんな苦しそうな顔をしているのかわからない。
手を握りながら立ち止まる2人の横を、何人もの人が通りすぎていく。
テテン、テテテンと陽気な祭囃子が流れるけれど、その音もなぜか遠くに聞こえた。
涼太とあなたはしばらくの間、じっと見つめ合った。
あなたは、涼太の熱いまなざしに縛られて、思うように体を動かせない―
しかしその時、不意に横から手が伸びて、あなたと涼太の手を強引に離した。
2人の前に現れたのは、廉だ。
廉はあなたの肩に手を回し、涼太からあなたを奪っていく。
あなたも涼太の様子が気になったが、順番は順番なので、後ろ髪を引かれる思いで廉についていく。
結局涼太は、あなたが他の男とデートするのを、黙って見送るしかなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!