『お前、妹に恋してるんだろ』───
廉に指摘され、涼太が改めてあなたへの恋心を自覚した──その夜。
晩ご飯の支度を終えた涼太は
とキッチンから声をかけた。
しかしあなたからの返事はない。
2階へあがると、あなたは自分の部屋で眠っていた。
涼太は床の上で熟睡するあなたを見て苦笑し、近くにあったタオルケットをかけてやった。
だけどあなたは寝苦しいのか、タオルケットをバサッと乱暴に放り投げてしまう。
涼太は仕方なくもう一度タオルケットをかけ直す。
寝相の悪いあなたはお腹までまくり上がったTシャツも気にせず、むにゃむにゃと寝言をつぶやいた。
ぐっすりと眠るあなたは、本当に幸せそうだ。
だけど涼太は、他の男の夢を見ているだろうあなたにイラついてしまう。
涼太はあなたの頬に手を伸ばすと、あなたの唇に自分の唇を近づけていく。
あなたが寝ているなら、このままキスしてしまおうか?
けれどあともう少し······というところで、涼太は動きを止めた。
やっぱりあなたが寝ている間にキスするなんて卑怯なことはできない。
涼太はあなたから離れ、静かに部屋を出ていった。
そして涼太が去ったあと、あなたの意識は浮上し、ゆっくりと目が開く。
あなたはぼんやりした頭で、今見ていた夢のことを思い出した。
確か誰かに傷つけたならされそうになる夢を見てた······。
その相手が誰だったのか、よく分からないけど······、なんだか続きが見たくなる夢だった。
あなたの胸は、なぜかきゅんと切なくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!