第4話

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2019/03/24 11:46
まずは尾行だ!その冴原の声に押されて、俺と冴原は隣の学校の校門を見張っていた。


「...てかさぁ、今日は創立記念日で俺らは学校がないからわかるよ。だけど先生は仕事今日もあんだろ?」

「あぁ。なんで生徒が休みなのに教師は休みじゃないんだ!訴えたい...」

「...それで、これのために有休とるとか頭やばいやつだろ...」

「だって桜川は当事者だろ。ここに寄越すのはよろしくない。田上は一応女子だからな。どういうルートを通るかわからんし第一アイツじゃ目立つ。てことは俺と等学院が一番適してるだろ」


まぁ、それはごもっともなんですけど。
永遠にこの押し問答が続きそうと思った俺は、沈黙でこの会話を終わらす手段を取った。
「いつ終わるんだ...」
「そろそろ長期休みなんで早く出てくると踏んできたんすけどね...」
時計をちらっと見ると今は正午少しすぎくらい。午前授業ならもうに出てきてもいいんだが。



「なーぁ。俺1回降りて飲み物か何か買ってきていいか?」
「ダメ。まず民家の木に登ってる時点で見つかったらやばいのに危険を何回も犯さないでください」
そう。俺らは今校門を見張るために、校門が見える位置の民家の木に登っているのだ。ちなみに許可は取ってないので普通に不法侵入である。


「あーあっちい...秋だっていうのになんでこんな暑いんだ...」
服の胸元を持って風をパタパタと仰ぐ冴原。
「先生ってそういう格好すんげえ似合うのになんで非リアなんすかね...」
「そんなの俺が1番聞きてえよ」
やけにセクシーなのになんでここまでモテないんだ?まぁ、運命の人がイケメンとは限らないか。ちなみに財力とも限らない。
「っあ。終わったぽい。今から出てきますよ、先生」

「おっきたきた。女子をたぶらかすクソ野郎は何処だー?」
すちゃ、と双眼鏡を構えて後者に向ける成人男性。...明らかに犯罪だ。いや既に今犯罪してるんだけどさ。
「んー、まだ出てきてねえな...」
不服そうに双眼鏡を下げる冴原。写真を取り出して照らし合わせては見るが俺ら2人とも写真は完璧に覚えているため無意味に近い。
「この体勢何気に辛いんで早く来て欲しいっすね」
「俺は来たら計画通りに...怪しい奴を演じればいいんだよな」
「はい。先生顔優しい系イケメンというより話さないと悪い顔イケメンなんで。ピッタリですよ」
「...なにそれ。不服」


まぁ出番があるならいいんじゃないすか。そう言うと冴原は子供っぽい顔をした。


「あっきた!」
冴原から双眼鏡を奪って覗いていると、覚えるまで見た顔がレンズの中に映った。
「おーじじゃあ行ってくる」
成人男性とは思えない身軽さで木をスルスルと降りていく冴原。これならさっき飲み物買いに行かせてもよかったかも。
冴原に少し遅れて降りていくと、そこには冴原と我らが敵である彼氏がいた。(そういやあいつから本名聞いてねえな...)
「ねーねーそこの君。ちょーと悪霊がついちゃってるよ。俺が払ってあげよっかぁ」
冴原が彼氏に言いよっている。彼氏は心底嫌そうな顔でそれを払っていた。
(よしよし。いいかんじだ)
冴原はこういう役が意外なことに似合う。まぁ人相はちょいワルイケメンだからな。
「おっさん何言ってんの?俺至って健康ですけど」
そんな冴原を軽蔑した目で見つめて、彼は言い放つ。
「君、複数人と浮気してないかい?ええ?」
びく、と彼氏の肩が揺れた。どうやら冴原の言葉は効いたみたいだ。
「...それの何が悪い?なんでお前が知ってんのは知らないけどさ。女ってそんなもんじゃん?いいじゃんそいつらが幸せなら」
でも直ぐに立て直すと、彼はヘラヘラと笑ってそう言ってのけた。なんかこいつ俺にいいよってきた女に似てる。つまり殴りたい。
「君にはいつか災厄が降りかかる。...きっかけは、1人の小さな少女...ってことかなぁ、僕の目がそうみた!」
少しテンションのあがった冴原のセリフ。どうやら本人も怒りを抑えてるようだ。拳をにぎりしめている。
「...はぁ。まぁ一人俺より年下いますけど。人を疑うことを知らないようなアホなんで。ないっすよそれは」
彼はまたヘラヘラ笑いながら、冴原を押しのけて進む。


彼氏が見えないところまで行ってから、冴原はこっちに駆け寄ってきて言った。
「あいつ殺していい?」
「気持ちはとてもわかりますが懲戒免職になるので社会的に殺すだけにしましょう」
2人でいやーな笑顔浮かべる。

この後、やつに降りかかる災難を想像して。

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