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第5話

EPISODE2 1
5
2020/12/23 09:00
今日は皇城で建国祭が開かれる。カルロは、父である皇帝にひざまずいた。
カルロ
カルロ
お願いします。俺は本気で戦争をなくしたいんです。
皇帝の部屋に響く声は震えていた。皇帝はカルロを追い出し、扉を閉めた。扉の外にはエレンがいる。
エレン
エレン
なんと仰っていましたか?
カルロ
カルロ
戦争をなくすために戦争をしている、だって。馬鹿げてる。
エレン
エレン
そうですか…。
カルロ
カルロ
皇帝陛下から頼んで頂かないとリブさんは仲間に入れてくれない。
エレン
エレン
過去に何かあったんでしょう。簡単には克服できませんよ。
カルロ
カルロ
…俺は諦めないからな。
カルロは虚空を睨みつけながら廊下を歩いていった。
建国祭は国中のどんな人間も必ず皇都に来なければいけない日だ。そのため、いくら独立している森の族でも、皇都に来る。それなのに、カルロはリブを見つけることが出来ずにいた。
カルロ
カルロ
どこにいる…。
森の族の女
森の族の女
あ、第二皇子殿下じゃないですか。ここで何をなさっているんですか?
森の族の人だ。カルロはその女性の両肩を掴んで言った。
カルロ
カルロ
リブさんはどこですか?!
女性はカルロから目を逸らし、言った。
森の族の女
森の族の女
長には会わない方が良いかと…。
カルロ
カルロ
なぜ?!
森の族の女
森の族の女
…長は外部、特に男性をとても憎まれていますので…。
カルロ
カルロ
…なんで憎むんだ?
森の族の女
森の族の女
その、過去に何かあったみたいで…。ダイアナ様に聞けばわかるんじゃないでしょうか?
女性はそう言ってカルロから離れた。カルロはすぐ近くにダイアナの姿をみつけ、全速力でダイアナの前に飛び出した。
ダイアナ
ダイアナ
わっ!第二皇子殿下?!
驚きを隠せない様子のダイアナを、強引に建物の陰に連れ込み、聞いた。
カルロ
カルロ
どうしたらリブさんに認めてもらえると思う?!
ダイアナ
ダイアナ
はあ?!長に認めてもらうなんて無理に決まってるでしょう?!
カルロ
カルロ
どうしてそう言いきれる?!
ダイアナ
ダイアナ
長には長の事情があるの!
カルロ
カルロ
どんな事情か教えてくれ!
ダイアナ
ダイアナ
本人から聞きなさいよ!
怒鳴り合う二人。カルロは口元を押さえ、申し訳なさそうにダイアナを見た。
カルロ
カルロ
ごめん。失礼だったな。
ダイアナ
ダイアナ
…なんでそこまでして長に認められたいの。長はあなたに酷いことを言ったでしょう?
カルロ
カルロ
過去に何かあったんだったらあの態度も仕方がない。それより俺はリブさんに協力したいんだ。
ダイアナが深く、大きなため息をついた。
ダイアナ
ダイアナ
なら本人と話して。今回は止めないから。
カルロ
カルロ
どこにいる?
ダイアナ
ダイアナ
上。
ダイアナが真上を指さした。すると、スタッという音がして、リブが降りてきた。リブはダイアナに向かって頷き、ダイアナが去っていったのを見て、カルロを見た。
リブ
リブ
どうしてそこまで私にこだわるの。
カルロ
カルロ
戦争をなくせるのはあなただけだと思ったからです。
リブ
リブ
私がなくせるわけが無い。私は数千年かけても止められなかった。
リブは馬鹿にするように冷たく言った。数千年。その長い月日には、気の遠くなるような戦慄があった。

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