あれから表彰式が終わってすぐに及川くんを探したが、及川くんのファンやら後輩くんやらに接触を阻まれ、結局メアドは聞けなかったので、、
『来ちゃいました、北川第一中学校』
校長先生には鷲匠先生を通してもう連絡してあるから、学校には入れたんだけど
今、ちょうど授業中だからとか言われて学校案内されてるんだが??校長じきじきに。
校長って暇なのかな?
「ここが2年の教室ですよ」
『あ、ハイ』
なんで教室になんか連れてきたんだろ??
あ、及川くんだ!
めっちゃこっち見てびっくりしてる笑笑
「驚きましたよ、鷲匠先生からお電話を頂いた時は」
校長先生は及川くんの方を見ながら私に言った
「及川くんはとても優秀な生徒だと聞いています。
うちの中学から白鳥沢に行く生徒はあまりいませんが、彼ならば良い結果を残せるでしょう」
『…………校長先生、それは少し違います。
確かに、白鳥沢には良いプレーヤーが沢山いて、及川くんはそんな彼らの実力を最大限に引き出せる能力を持っています。
しかし、私はそんな勿体ないことはしません。
彼にはもっと成長してもらわなければなりません。
白鳥沢のような完成されたチームでは彼の成長はないでしょう。
彼はいづれ世界で戦う選手になる可能性を秘めています。それを目先の結果だけで潰しては彼の才能をも潰すことになります。』
「確かに…………あなたの言う通りです
生徒の将来を考えることも教師の務めです。
及川くんも、貴方のような理解ある人に出会えて幸せでしょう」
『すみません、生意気なことを言ってしまって。』
気にしないでくださいと、校長先生は言ってくれた。
良かった、優しい人で。
でも、及川くん私が何しに来たか分かってないから幸せもないにもないんだよな。
「そろそろ授業も終わりそうなので、校長室の方に行きましょうか」
『あ、ハイ』
え、じゃあ なんで連れてきたの??
このおじいちゃん、
もしかして私がどんな奴か探り入れてきたんじゃ
「おっほっほっ
さぁ、こっちですよ」
…………たぬきめ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!