第13話

結構…急だったんです。
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2022/06/10 07:00
放課後。
今日も、知千は自分の机に突っ伏していた。
風を浴びながら、ジャム彼女を待っている。
益田 知千
益田 知千
…。
益田 知千
益田 知千
(本当に昨日と同じになっちゃったな…)
昨日と今日、よく似ていて、まるで同じ日をループしたようにも感じられた。
益田 知千
益田 知千
ふぅー…。
「失礼しまーす!」
益田 知千
益田 知千
わっ…!
耳元で囁かれてびっくりした知千は体を起こした。
ジャム
ジャム
わっ?!
益田 知千
益田 知千
あ…。
益田 知千
益田 知千
すみません…。
ジャム
ジャム
ううん、大丈夫。
ジャム
ジャム
こちらこそ、急に驚かしてごめんね。
益田 知千
益田 知千
いえ…。
ジャム
ジャム
…今日も教室から出ていないカンジ?
益田 知千
益田 知千
…はい。
ジャム
ジャム
なーるほどね…。
ジャム
ジャム
そういえば、お母さんとはどうだった?
楽しく過ごせたかしら?
益田 知千
益田 知千
はい、久々に会えて…嬉しかったです。
一緒にご飯も食べたりして…。
ジャム
ジャム
そう、良かった~。
ジャム
ジャム
…私も久々に両親に会いに行ってこようかな~。
ジャム
ジャム
…そういえば、君、お母さんと会うの久々って言ってたけど…。
ジャム
ジャム
もしかして、君も一人暮らし?
確か、この学校、学生寮は無かったはずだから…。
益田 知千
益田 知千
あ、いえ…一人暮らしでは無いですけど、一人暮らしに近いというか…。
益田 知千
益田 知千
その…俺の母さんは泊まり込みの旅館で仕事をしていて、よく家を空けるんです。
益田 知千
益田 知千
だから…一人になることが多くて…。
ジャム
ジャム
なるほど、お母さん一生懸命働いているんだね。
ジャム
ジャム
お父さんは?遠くにいるの?
益田 知千
益田 知千
え、えっと…そうですね。すごく遠いところ…。
ジャム
ジャム
すごく遠いところ…?
益田 知千
益田 知千
そうです…その、空の上です。
ジャム
ジャム
空の上…。
益田 知千
益田 知千
あ、その…実は、俺の父さん、4年前に亡くなっているんです…。
ジャム
ジャム
そうだったんだね…。
益田 知千
益田 知千
病気で…。
ジャム
ジャム
うん…。
益田 知千
益田 知千
結構…急だったんです。
…病気が見つかるのも、亡くなってしまったのも。
益田 知千
益田 知千
俺…父さんに憧れてて、大人になったら父さんみたいになろうって、よく考えてました。
益田 知千
益田 知千
…大人になって、家族が出来たら、父さんみたいに働いて、家族を幸せにしようって。
益田 知千
益田 知千
そして、自分を育ててくれた父さんや母さんを、次は自分が幸せにしていけたらなって…。
ジャム
ジャム
うんうん…。
益田 知千
益田 知千
でも、それを父さんたちに言うのが恥ずかしくて…出来なくて
益田 知千
益田 知千
「大切な人に想いを伝える」っていう授業があって…最後は、授業参観でそれを発表することになっていました。
益田 知千
益田 知千
俺は、いつか父さんみたいになるって発表して、それを父さんに聞いてもらうつもりだったんです…。
ジャム
ジャム
…うん、そうか。
益田 知千
益田 知千
…でも、その前に父さんは亡くなってしまった。
ジャム
ジャム
そうだったんだね…。
益田 知千
益田 知千
…こんなに、父さんのこと話したの初めてだな…。
ジャム
ジャム
…今まで、話せなかったの?
益田 知千
益田 知千
…みんな可哀想がったり、腫れ物に触るような感じで
益田 知千
益田 知千
「思い出さなくて良いよ」「変なこと聞いてごめん」とか…
益田 知千
益田 知千
俺は話を聞いてもらいたかったんだけど…
益田 知千
益田 知千
…なかなか話せなかったんです。
ジャム
ジャム
うん。
益田 知千
益田 知千
でも、ジャムさんはずっと聞いてくれました。
益田 知千
益田 知千
…ありがとうございます。
ジャム
ジャム
話した方が良いよ、全部。
話した方が良いんだよ。

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