「懐かしいわ。あんたにもこんなにかわいい時期があったのね~。」
そう言いながら、母は僕に写真を渡してきた。
黙って受け取り、何枚かめくって見てみる。
あ。
2、3才くらいだろうか。
ソファーのうえに座っている。
いまはなき柴犬のアンダーも一緒だ。
懐かしいなぁ。
僕はアンダーが大好きだった。
とても優しい犬だった。
幼い僕がしっぽを噛んでも、毛を掴んでも、彼女は怒って吠えるでも、噛み付くでもなく、ただ、優しく頬を舐めてくるだけだった。
彼女は僕にとって二人目の母だった。
、、、、、、。
僕の左側にアンダー、右側は、、、。
なぜか、へこんでいる。
まるでだれかが座っているかのようだった。
これは!心霊写真か!
恐怖心よりも、珍しい体験をすることができた、という興奮のほうが大きかった。
「見て、母さん!これ心霊写真じゃない?」
「どれどれ」
意外と落ち着いて写真を見た母は
「たぶんお化けじゃない?あんたなんにも覚えてないの?」
と平然とと言った。
「あんたの友達よ。と・も・だ・ち」
「は?」
僕には意味がわからなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。