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第10話

<2-3 ようこそ地獄へ>
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(まさか祐生と高星さんのふたりきりじゃなく、生徒会の会議だったなんて!)
やっちゃった。やってしまった。
祐生と高星さんがキスしようとしていると勘違いしたあげく、生徒会の会議に乱入してしまうとか、私ってば最低すぎる!
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(そういえば祐生はもともと生徒会メンバーだし、高星さんのことも生徒会に誘ったって誰かが言ってたんだ。なんでその可能性を思いつかなかったんだろう。あああ、私のばかー!)
いてもたってもいられなくて、私は「すみません、失礼しました!!」と頭をさげる。
そのまま逃げようとすると。
茶髪の男子生徒
おい、ちょっと待て
茶髪の男子生徒が私を呼び止めた。
茶髪の男子生徒
用があったんだろう? 話は俺が聞く
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(ひえっ、どどどどうしよう)
これは困った。だって話なんてないんだもの。
祐生が「彼女は俺に用があったんだと思うので」と助け船を出そうとしてくれる。
けど、茶髪男子は祐生の提案をことわった。
茶髪の男子生徒
日吉の知り合いなら、俺が代わりに聞いておく。日吉は会議に集中していろ
日吉 祐生
日吉 祐生
でも、秋月あきづき会長
秋月会長
秋月会長
いいから
祐生を強引にだまらせて、秋月会長と呼ばれた茶髪男子が私を見下ろす。
どうやら彼は生徒会長らしい。
言われてみれば、生徒会長は秋月とかいう名前だった。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(でも、それ以外でもどこかで見たような……?)
どこで見たんだっけ? なかなか思い出せない。
とまどっていると、秋月会長が「行くぞ」と私を廊下に連れだした。
そのさい、秋月会長は壇上の女子生徒に声をかける。
秋月会長
秋月会長
ちょっと俺は出るけど会議は続けていてくれ。人手が足りない件は考えておく
女子生徒
わかりました
秋月会長が女子生徒に告げた。
秋月会長
秋月会長
よろしくな、高星
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(え──)
ぱたん、と扉が閉められた。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(高星って、つまりさっき壇上にいた女子が高星桜さんなの!? き、気になる……!)
美人の転校生、高星桜。
祐生と仲がいいと噂で、私のライバルと思わしき女子。気にならないわけがない。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(とはいえ、まずは目の前の秋月会長だよね)
私はあらためて、秋月会長にむきなおり頭をさげた。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
あの、会議中にとつぜん入っていっちゃって本当にすみませんでした
秋月会長
秋月会長
たしかにかなり迷惑だったな。はっきり言ってかるく軽蔑する
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(うっ)
腕を組んだ秋月会長が私を見下ろす。
秋月会長
秋月会長
高校生にもなってノックも確認もせず飛び込んでくるなんて恥ずかしくないのか? 今後はもうすこし落ち着いて行動したほうがいいぞ。あと叫ぶな。うるさかった
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
は、はい、そうですね……
(秋月会長の言葉が厳しすぎてつらい……事実なんだけどさ)
反省して「次からは気を付けます」と神妙に言えば、秋月会長は「それならいい」とうなずいてくれた。ほっとひと安心だ。
秋月会長
秋月会長
じゃあな。もう走ったり叫んだりするなよ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
はい
秋月会長
秋月会長
…………
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
…………
説教を終えた秋月会長が、不審げに私を見た。
秋月会長
秋月会長
……帰らないのか?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
……いえ、その
ちらり。私は情報科教室の扉を見た。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(あそこに今、祐生は高星さんといるんだよね)
気になっているのはたったひとつ。

結局、キスってなんのことだったの? ってこと!
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(あれが解決しないと気になって帰れないよ)
できることなら、今すぐ盗み聞きを再開したいくらいだ。
とはいえ、そんなよこしまな気持ちを素直に言うわけにもいかなくて、だまってチラチラと情報科教室の扉を見る。
私の視線に気づいた秋月会長が首をかしげた。
秋月会長
秋月会長
もしかして会議の様子が気になるのか?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
う……っ、は、はい。すこし
「ただの会議だぞ?」と秋月会長はふしぎそうに私を見る。
秋月会長
秋月会長
まあそんなに気になるなら、ちょっとくらい見てもいいけど
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
いいんですか!?
秋月会長
秋月会長
ああ。ただし絶対に邪魔するなよ
秋月会長が扉を細く開け、小声で説明をつけくわえてくれる。
秋月会長
秋月会長
今日の議題はホワイトボードに書いてあるとおり、文化祭での生徒会の出し物だ。今年は劇の予定で、内容は白雪姫。主役兼監督が壇上にいる高星だ
扉の隙間から私がまず見たのは、壇上の女子生徒のこと。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(あれが高星さんか)
すきとおるような白い肌。すらりとした手足。さらさらと音がしそうなきれいな髪。
大きな瞳は長いまつげにふちどられている。ちょっと気が強そうな美少女だ。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(うわぁ、ほんとにかわいい子だな)
見ているだけで、ため息がこぼれそうになる。
ああいうひとはパンダのモコモコくつしたなんて履かないんだろうし、ましてや幼なじみがキスしていると思い込んで会議に乱入したりもしないだろう。なんでも完璧にこなしそうだ。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
いかにも白雪姫って感じですね……
私が感想をこぼすと、秋月会長が冷たく返してくる。
秋月会長
秋月会長
顔は関係ないだろ。高星は演劇部の経験があるから日吉がスカウトしてきただけだ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
そうなんですか
(祐生、スカウトなんてしてたんだ)
私はそれも知らなかった。秋月会長がつけたすように言う。
秋月会長
秋月会長
ちなみに王子役は日吉だぞ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
ええ! 祐生が王子っ?
秋月会長
秋月会長
うるさい
大声を出すと、秋月会長ににらまれた。
けど、しかたないと思う。
だって祐生が王子なんて、はまり役すぎるもの!
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(すごい楽しみになってきた! ……あれ、でも私、やっぱり祐生から何も聞いてないよね)
なんで祐生はだまっていたんだろう。
いつもの祐生なら恥ずかしがりながらも教えてくれそうな話なのに。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(そもそも、どうして祐生は高星さんのことを何も言わなかったの?)
すくなくとも私たちは友達のはずなのに。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(……高星さんが特別だから?)
祐生が何も話してくれていなかったことが気になって、胸のあたりがそわそわする。
 なにもかもが不安でしょうがない。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(そういえば、祐生が王子役で高星さんが白雪姫役ってことは、キスって劇のことかな)
秋月会長に聞いてみると、秋月会長は「ああ」と、うなずいた。
秋月会長
秋月会長
ほら、白雪姫って王子のキスで姫が生き返るとかそんな話だろ。高星はキスのふりをするんじゃなく、ちゃんと実際にキスしたほうがいいんじゃないかって言ってたんだ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(そういうことだったんだ)
祐生と高星さんのキス疑惑は、あくまで舞台の話だった。
けど、それで私の心が晴れるわけじゃない。
「まぁそこまでする必要はないし止めるつもりだ」という秋月会長の声が耳を通りすぎる。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(やっぱり、高星さんは祐生が好きなのかも)
だって好きでもなかったら、いくら演技とはいえキスなんてできないと思う。
しかも高星さんは噂どおり、祐生と親しそうに話している。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(まさか、このままふたりはつきあっちゃうの? そんな──)
ふるえそうになる指先をにぎりしめたとき。
秋月会長が「へぇ」と意地悪く目を細めた。
秋月会長
秋月会長
おまえ、日吉と高星の仲が心配で見に来たのか
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
ふぇっ!?
とっさに変な声がでた。
秋月会長が「うるさい」と顔をしかめて、扉をふたたび閉める。
だけどそんなことにかまっていられない。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
な、なな、なんでそれを!
恥ずかしさのあまり声がうわずる。
とたん、秋月会長は「やっぱりな」とつぶやいて。
急に距離をつめてきた。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(……え?)
とつぜん近づかれ、つい後ずさってしまう。
背中に冷たい壁が当たるのがわかった。
間近にせまった秋月会長と目が合う。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(秋月会長って、こんな顔してたんだ……)
どうして壁際に追いつめられているのかわからなくて、私はそんなことを考えてしまう。
祐生と高星さんばっかり見ていたから、ちゃんと秋月会長の顔を見たのはこれが初めてだ。

強気な表情がよく似合う、髪と同じ色をした切れ長の瞳。自信にみちた笑いかたをする唇。
堂々とした立ち姿には、なんとなく圧倒される威厳みたいなものさえ感じる。
甘い雰囲気の祐生とは正反対のタイプだ。
見とれてしまいそうなほど、ととのった顔──。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(あっ、そうだ。この顔、どこかで見たと思ったら前に見かけたんだ)
ふいに気付いた。
私はこのひとを通学路で見たことがある。
口喧嘩をしていた女子生徒と男子生徒。恋愛予報が【雷】と【大雨】だったふたり。
『恋愛に興味はないし誰ともつきあう気はない』とか言って、男子は女子を振っていた。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(秋月会長ってば、あのときの男子生徒なんだ──!)
あのときの冷たい横顔とは違い、みょうに楽しそうな顔で秋月会長がささやいた。
秋月会長
秋月会長
日吉が好きなんだな
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
秋月会長の指摘に、私の顔が一気に赤くなる。
秋月会長が鼻で笑う気配があった。
秋月会長
秋月会長
態度でばればれだ。おまえ、嘘がつけないタイプだろ。素直っていうか、なんていうか……いまどき幼稚園児でも、もうちょっとうまくごまかすぞ。つくづく子供脳なんだな
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
子供脳!?
秋月会長
秋月会長
安心しろ、多少要領が悪い人生を送るかもしれないけど、嘘つきよりよっぽど美徳だ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(なんかひどいこと言われてる気がする!)
「ちなみに」と秋月会長に目をのぞきこまれ。
拒絶をゆるさない口調で問いかけられた。
秋月会長
秋月会長
おまえ、名前と学年は?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
へ? えっと、1年の天野ヒカリですけど
秋月会長
秋月会長
部活は?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
はいってません
秋月会長
秋月会長
委員会は?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
図書委員です
秋月会長
秋月会長
図書委員だと文化祭の出し物は古本市だったな。役職は決まっているのか
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
えっ、午前に店番を……
秋月会長
秋月会長
なら、クラスの出し物は?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
希望生徒のダイエット挑戦記録展示です
秋月会長
秋月会長
ああ、1Cのあれか。変な展示だよな。で、おまえの仕事は?
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
…………とくにありません
なにせ役職を決めるHRで、私は三角関係警報に悩んで空気になっていたので。

立て続けに変な質問をしてきた秋月会長は、満足したのか「ふんふん」とうなずいた。
秋月会長
秋月会長
理想的な環境だな。しかもあつかいやすい
秋月会長のひとりごとが聞こえる。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(待って、なんか嫌な予感がする)
できれば今すぐ、ここから逃げ出したい。
けれど私が何かをするより前に、秋月会長が口をひらいた。
秋月会長
秋月会長
おまえ、生徒会の劇を手伝え
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
…………はい?
いったい何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
そもそもどうしてとつぜん命令形なのか。

まぬけな声をあげた私に、秋月会長は続ける。
秋月会長
秋月会長
手伝うって言ってもたいしたことじゃない。雑用だ。部活に入ってなくて、クラスの出し物でもたいした役職についていないならちょうどいい。委員会のほうには言っておく
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
な、なんで私がっ?
秋月会長
秋月会長
たいていのやつがめんどくさそうだからと断ってきて人手不足なんだ。でも、おまえは日吉と高星がどうなるか気になるだろ? 手伝うことになれば近くで様子を探れるぞ
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
………………
秋月会長
秋月会長
明日から手伝いに来いよ。俺の手伝いとして指名しておく。ああ、おまえ、覚えてなさそうだから教えておいてやるけど、俺は生徒会長の秋月蓮だ。2Aな
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
あの、受けるつもりはないんですが
秋月会長
秋月会長
ちなみに断るなら、おまえが何をしにきたのか日吉と高星にばらす
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
な!?
あっさりと言われて全身から血の気が引く。
けど、目の前の秋月会長は本気のようだ。
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(これ、まさか──……)
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
……私、脅迫されてます?
秋月会長
秋月会長
よくわかったな、そのとおりだ
にやり。
秋月会長は本当にあくどい笑いをみせて。
傲岸不遜に言いきった。
秋月会長
秋月会長
ちょうど手伝いが足りなくて困ってたんだ。よろしくな、盗み聞き女
天野 ヒカリ
天野 ヒカリ
(こ、このひと、やっぱりひどい! 悪人だーーーー!!!)
かくして私は秋月会長の強引な手段によって生徒会を手伝う羽目になってしまったのだ……。