十月も終わりのころだった。
日はすっかり暮れ、落ち葉が風に吹かれてカサカサと舞う。
公園のすみでは小学校低学年くらいの小さな女の子が静かに涙を流していた。
彼女を追ってきたらしい男の子が声をかける。
少年に問いかけられ、少女は悲しげに首を横にふった。
思い出したのか、少女の目からまた涙がこぼれる。
少女がさいごまで言う前に、少年がいきおいよく大声を出した。
おどろいて少年を見上げた少女に、彼はつづけて言う。
即答され、落ち込んでいた少女の表情にゆっくりと希望の光がさしていく。
やがて彼女は、きらきらとした瞳で「ありがとう、ゆうせいくん!」と彼を見つめる。
少女に礼を言われ、少年は誇らしげに微笑んだ。
堂々と彼が宣言したのと、冷たい夜空に花火があがったのは同時だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。