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〜4月〜
桜が咲き乱れて、
暖かい風が吹いている。
天気は快晴。まさに入学式日和。
そんな中で春に、似合わず
ギャーギャー騒いでいる私たち…。
遅刻した私たちは、
慣れないローファーと、
ブカブカの新しい制服に苦戦しながら
学校に向かって全力で走って行く。
遅刻した理由は、
この私の寝坊が原因……。
情けない子でごめんなさい。笑
だから、私は
学校に行く前から半分メンタルがやられていた。
なんて泣きそうになっている私。
というかもう泣いている私。
と励ましてくれているのは、
私の親友の柏木みら(かしわぎみら)
みらとは小学生の頃から仲が良くて、
いつもダメダメな私のお世話をしてくれる、お母さん的な存在。
なんて、ついついみらに甘えちゃう私。
私たちは走りながらこんな会話を、
もう30分も続けていた。
みらの言葉を聞いて前を見ると、
校門と、校舎が見えていた。
(ほんとだ‼︎見えた!あと200メートルくらいかな⁇)なんて思いながら、
校門と校舎めがけて走る。
そして、距離がだんだん近づいてきて、
いざ、校門と校舎を目の前にすると、
(私、本当に高校生になったんだ‼︎‼︎)
という、実感がなぜか急に湧いてきてしまった。
それと同時に、胸の中がワクワク感でいっぱいになった。
校門まであと少し…。
花の高校生活スタートまで、
あと、約50メートル‼︎‼︎
高校生活の事を考えると、
ワクワクが抑えきれずに、
みらにそう提案してみる。
(みら、相変わらずのお母さんぶり…‼︎)
なんて思いながら、
と、思いっきり合図をする。
50メートルを一斉に走り出す私たち。
私はもともと走る系は得意だし、
みらは、スタート出遅れたのもあって、
私は、みらよりも早く校門に着けた。
と叫び、両手を上にあげる。
そして、校庭を見回して、
(こんにちは‼︎花の高校生活‼︎)と
私は上を見上げ、校舎を見ながら
心の中で叫んだ。
(もっと高校生らしくなるぞ‼︎)
という、自分の中での目標も決めて、
いざ‼︎花の高校生活スタートです‼︎
というわけにもいかず……。
そんなに簡単に変われないのが人間というものだね笑
私も、人間で…今日から変わることはできなかったみたい。
〈ガッ!〉
上ばっかり見ていた私は、
校門の出っ張りに躓き、
いつのまにか体は宙に浮いていた。
みらの声がする。
私はぎゅっと目を瞑った。
(あーこれ結構痛い転び方かも…。)
なんて思いながら、
次にくる、痛さに備えて倒れるのを待っていた。
(あーぁ、入学式泥だらけだろうな…。)
なんて事も考えていたのに、
いつまで経っても、
私の体は地面につかずに、
覚悟していた痛さは襲ってこない。
それどころか、
目を開けると体はまだ宙に浮いたままだ。
確かに転んだはずの自分が
まだ転んでいないことが不思議で、
わけがわからなくなった私は、
その体制のままで、
なぜ転ばなかったのか考え始めた。
(あれ?だって確かに何かに躓いて…
それで、泥だらけになる覚悟もして…)
なんて、足りない頭で考え混んでいる自分。
すると、
私の頭の上から、
男の人の落ち着いた声が聞こえてきた。
その声を聞いて、
ようやく状況を理解する私。
(あ、この人に助けてもらったんだ‼︎)
なんて思いながら、
慌てて立ち上がり、
「すいませんでした!
ありがとうございました‼︎」
と言おうとした。
だけど、その声は
みらの声慌ただしい声が被って、消えてしまった。
みらがそう言って、
慌てて私の手をとり、
体育館まで引っ張って行こうとする。
しかし、男の人が
と私とみらのことを呼び止めた。
……そういえばそうだ。
私たちは遅刻ギリギリできたから
まだクラスも番号も知らない…。
みらに聞いてみたが、
顔を見る限り、みらも知らなさそうだ…。
というか、学校にくるまで、
ずっと一緒にいたから
みらが知ってるはずもない。
と、みらと話してる時間もあるわけがなく、
《とりあえず体育館に行こう‼︎‼︎》
という考えを出して、
体育館に向かおうとした。
しかし、またもや男の人に呼び止められてしまった。
急な男の人の情報に、
私とみらは一瞬ぽかんとしたが、
もう、その情報が嘘でも信じるしか
道はないと思い、
一言お礼を言い、
ダッシュで体育館に向かった。
まさかこの先いろんなことが
この彼と起きるということを
私はちっとも考えてはいなかったし、
誰も予想をしてはいなかっただろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。