俺の好きな人 .
たまらなく愛おしい人 .
それは勉強もできて運動もできて
色々な事をそつなくこなしては
俺への気遣いもできる .
女の子 , って感じの子 .
ではなく
勉強は俺とどんぐりの背比べ位の差で
運動は出来るけど上手くはなくて
ノリ悪い日もあって、自我が強くて、
部屋も汚いし , なんか…
生意気なヤツ .
合わないなーとか ,
俺も生意気なのに思ってた .
でも , 今はなんか個人的にすげー好き .
すごい冷めた目で
見つめてくるロンジュンと
全く同じ教科書を手に移動先へ向かう .
移動教室がめちゃくちゃだるいって
先生たち気づかないのかな ~
階が違ったら尚更面倒なんだってのに
なんでだ?
目の前には広めの講義室が開くのを
今か今かと待機している
俺のクラスメイトと
他のクラスの人たち .
出た , モテる男は違うよなー .
俺もモテる顔だと思うんだけど
なんでこんなに女の子に
話しかけて貰えないの?
え , 待て . ジェノのクラス?
てことは…
ほんと 生意気なお口だ事 .
俺がああ言えば向こうはこう返す .
偉そうで , 辛辣で ,
女とは思えないような
そんなような口調で俺に言い返す .
それが好きって言ったら
語弊が生まれるかもしれないけど
俺は飾らないコイツが思ってるより好き
先生がやってきて扉を開ける
移動教室命令しといて
教室開いてないってふざけてるなー…
なんて思いながら出るあくびを手で隠して
先生が黒板に引っつけた座席表を眺める .
うげ、ロンジュンと離れたし .
ジェノも , …ジェミナも…
あぁ , でも
コイツの後ろなら退屈しないかも
教科書とノートを開いては
筆記用具を取りだして
早速動かし始める彼女 .
真面目かっての…
勉強そんな出来ないくせに
なんて思いながらもこの先生の授業は
まぁ面白いから一緒になってペンを動かす .
久しぶりに真剣に
受けてやろうなんて思ってたのに
下を向いたり上を向いたりする度に
サラサラ動く好きな人の髪の毛が
気になってしょうがない .
なんも見えないし ,
どんな顔してるかもわかんないのに
姿がすぐそこにあるだけで
好き , とか
可愛い , とか
思うのって変なのに
素直に考えれば考えるほど溢れ出てくる .
たまに自分がわかんなくなるから ,
恋って意外と面倒くさい .
一回彼女に夢中になって
先生の話を聞き逃したから ,
もう授業の話は
ワケわかんなくなってしまった .
後でジェノにでも教えてもらお
暇になってしまった俺は
彼女の髪の毛をそっと触る .
サラサラしてて ,
日に当てると少し茶色く光る .
きっといい匂いがするんだろうなんて
変態みたいなことを考える .
とか言いながらも見捨てられないから
俺を起こしてくれるんだろう .
俺は机に突っ伏して
にやけそうな顔を隠した .
時計を横目で確認すると
授業が終わってもう10分が経ってた .
ロンジュンも、他の奴らも居なくて
教室には俺と彼女の2人だけ .
ジト目で見つめながら
そうやって言うくせに
俺が立ち上がるまで
立たないのは何なの?
何かと頼み事したら
文句言いながらやってくれたり
うざい , とかきもい , とか言う割に
俺の事普通に家にあげるし
なんかわかんないけど
お菓子とか作ってくれるし
弁当だってくれたことある
クラス離れても ,
話しかければ返してくれるし ,
見つけたら何かと声掛けたりしてくる .
もしかしたら , もしかしたらだよ
そういうことも , まぁ
無きにしも非ずなんじゃないかなんて ,
馬鹿な俺は考えちゃう訳 .
期待したい . 好きだから .
こっちだけ見てほしい . 大好きだから .
好きになって欲しい . 愛してるから .
小学生みたいな言葉でもいいから
伝わって欲しいくらいには好きで
でも , その言葉すら見当たらないのが
好きすぎて何も出来ない原因で
胸が痛いほど苦しいのももう嫌なのに
どこか楽しく感じるから嫌になってくるし
すごい態度に出てるって ,
自分でも嫌ほど分かっちゃうもん .
なんでこんなに好きなんだろうな .
顔もタイプじゃないくせして .
声も , 仕草も , なんか全部
別にタイプだったり
好きだったりしないのに
気付いたら惹かれてて
気付いたら落ちててなんて
漫画の中だけだと思ってたのに
でも , やっぱり
俺はあんたのそこが好きなんだわ .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。