7月の中旬
暑いし、虫はいるし。かゆいし!!
だから夏ってあまり好きじゃないんだよね。
でも………節約しないといけないし。
窓を開けて扇風機を回している。
「はぁ…全く思いつかない。」
私、七瀬あなたは小説家。
4年前、一度作品が売れたものの、それから全く売れていない。
それにもうすぐ30歳。独身、彼氏すらいない。あの頃が人生の絶頂だったのかな。
「七瀬先生!いつもの買ってきました!」
「真辺くん、いつもありがとね。」
担当の真辺(大樹)くんは私がやりやすいようにフレンドリーに接してくれている。
それに、いつも誠実で気がきいて、私のような作家について可哀想だと思う。
まあ、そんなこと考えてるんならさっさと書けよって感じなんだろうけど。
「先生?」
「ん?あ、ごめんね。ちょっとボーッとしてて。」
「そうですか。」
無理…してるよね。真辺くん。
「早く書いてくれって思ってるよね。ごめん。なかなか出てこなくて…」
「そんなことないですよ。
そうだっ!気分転換に外にでも行ってみたらどうですか?」
外?この暑い中?
「でも、暑いし。」
「僕について来てください。いい場所があります!」
どこ?
まあ、せっかくこう言ってくれてるんだし…行ってみようかな。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「はいっ!車出してきますね。」
真辺くん、本当にいい人。
私なんかよりずっと若いのにしっかりしてるな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。