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第1話

あの日
323
2019/10/01 13:42
7月の中旬 


暑いし、虫はいるし。かゆいし!!

だから夏ってあまり好きじゃないんだよね。

でも………節約しないといけないし。

窓を開けて扇風機を回している。


「はぁ…全く思いつかない。」

私、七瀬あなたは小説家。

4年前、一度作品が売れたものの、それから全く売れていない。

それにもうすぐ30歳。独身、彼氏すらいない。あの頃が人生の絶頂だったのかな。

「七瀬先生!いつもの買ってきました!」

「真辺くん、いつもありがとね。」

担当の真辺(大樹)くんは私がやりやすいようにフレンドリーに接してくれている。
それに、いつも誠実で気がきいて、私のような作家について可哀想だと思う。

まあ、そんなこと考えてるんならさっさと書けよって感じなんだろうけど。

「先生?」

「ん?あ、ごめんね。ちょっとボーッとしてて。」

「そうですか。」

無理…してるよね。真辺くん。

「早く書いてくれって思ってるよね。ごめん。なかなか出てこなくて…」

「そんなことないですよ。
そうだっ!気分転換に外にでも行ってみたらどうですか?」

外?この暑い中?

「でも、暑いし。」

「僕について来てください。いい場所があります!」

どこ?
まあ、せっかくこう言ってくれてるんだし…行ってみようかな。

「じゃあ、よろしくお願いします。」

「はいっ!車出してきますね。」

真辺くん、本当にいい人。
私なんかよりずっと若いのにしっかりしてるな。

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