第19話

食事
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2019/10/03 10:42
「あなた~??」


あ、ごめん。大樹…


「えっ?あ、ご、ごめんね。」


「どーしたの?気分悪い?」


「ううん。大丈夫、ボーッとしてただけだから。」


「そっか。じゃ食べよ。」



大丈夫。大樹はそんな奴じゃない。

今なら胸を張って言える、大樹はあんな奴とは違うって。


「いっただきまーす!」


「「いただきます。」」


大樹に続けて、私とお義母さん(まだ結婚もしてないけど)。


「ねーねー、あなたさんはいくつかしら。あ、ごめんね。一応、ほら結婚とか…ね?」


「け、結婚??」

「あ、今は29です。今度の誕生日で30になります。」

分かってはいるけど、ちょっと言うと…


20代と30代の大きな境界線は何なのよ…



「そうなの?見えないわぁー!大樹、年上がタイプなのね。」


「違うって!!」


「じゃあ、出会ったきっかけは?」


「実は…あなたは小説家なんだ。俺は、あなたの担当編集者になった。それが出会い。」


「えっ?それっていいの?」


「でも、もう担当じゃないから。」


「そうなの…
まあ、お母さんは誰が反対しようとも応援するわ!!」


「ありがと。」


「ありがとうございます。」


「じゃ、帰るわね!二人の邪魔をしたらいけないから…」


「今日、来てもらったのはそんなんじゃない!」


「そうですよ。一緒にご飯食べようと思って来ただけですから…私が帰ります。」


「はあ?二人とも泊まっていけばいいじゃん。
母さんはいつものところ、あなたは俺の部屋。俺はソファーでいいから。」


「そんな!ダメだよ。」


「じゃ、やっぱ帰るわね!」


プルルルル…


「お父さん待ってるから。」


「…分かった。」


「え?」


「じゃーねー!」


「え?え?あ、ありがとうございましたっ!」


なんか気を遣わせてしまったな。



プルルル…


誰だろ。ベランダに出る。

番号が表示されている。登録はしてない人みたい…なんか嫌な予感もするけど、出てみる。

「もしもし…」


「あなたっ!」

「ひ、博也…?もうかけてこないで…」


「やり直したいって思ってる。あと、あのときの誤解を解きたいんだ。」


は?


「誤解?」


「そう。あさっての4時に、あのショッピングモールのとなりの○○公園で待ってる。」


「…」


「じゃ、あさって来てな。」


口調が違った、あのときと。随分と優しくなった。
私はバカだから、行こうかななんて考えてしまった。


「誰から?」


ベランダから戻ると、大樹に話しかけられた。



「あ、友達。あさって会えない?って。」


「そっか。」


「うん。」

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