『今日、家に行ってもいいかな?』
いつも行くと悪いし、1週間はどうなんだろう?早いかな…?
すると、通知が。
『いいよ。料理、楽しみにしてる👍』
ふふっ。
そんなこと言われると、うれしくてたまらなくなっちゃう!
さーて、何作ろっかなぁー?
んん…。
スーパーで、ミンチを買う。
そう、迷った末、ハンバーグにした。
だって、ハンバーグ嫌いな人なんていないでしょ?
いるかもだけど。
でも、次のために、大樹が好きな料理を聞いておこう。
”ガチャ”
合鍵を使って家に入ると、電気がついていた。
もしかして、大樹が帰ってる?なら、早く作らないと!
リビングのドアを勢いよく開けると…
「あ、あなた…誰?」
え?
40代後半か50代前半ぐらいの女性がいた。
…あ、もしかして…大樹のお母さん!?
気まずい沈黙が少し続き、
「あの、大樹さんのお母様ですか?」
「ええ。」
「すみません!私、大樹さんとお付き合いをさせてもらってます、七瀬あなたと申します。」
「なあーんだぁーー!ビックリしたのよ!
あの子、そんなこと全然話してくれないから…まさか彼女さんがいるなんてねぇーー!」
よかった。フレンドリーそうだし、怒ってなさそう。
「なんか、驚かせてすみません。」
「いいのいいの!あれ?買い物行ってたの?」
「あ、はい。ハンバーグ作ろうかなって思って、ミンチを…」
「うんうん!
私もね、ハンバーグ作ろうとしてて、ミンチないなって思ってたのよ!一緒に作りましょ、あなたさん!」
「は、はい!」
なんかいいお母さん。まあ、大樹を育てた人だから当たり前か。
ハンバーグを作っていると…
「そういえば、香織さんは何をやっているの?あ、仕事のことね。」
「えっと…」
小説家………
「私は…」
私の言葉を遮って、大樹が帰って来た。
「っただい…ま?」
大樹は私たちを見て、完全にフリーズ状態。
「母さん、何で居んの?」
「何でっていつも月1で来てるじゃないの。」
「そ、そうだけど…」
そりゃそうだわ。
家に帰ってきて、彼女と母親が一緒に料理してたらねぇ…
「だ、だーいじょうぶよ!仲良くやってるから。ね、あなたさん!」
「はい。とても気さくに話しかけてもらって…」
「ふふっ!さあ、出来たわよ。食べましょ!」
まあ、悪く思われてないみたいだし。
って、今私は何を考えてたの?結婚?そ、そんな大樹はまだ若いし…そうだ。
私はもう30なんだ…あれから、2年が経つんだね…
”結婚”
目前までいってたんだけどな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。