第4話

12月 多分、きっかけって風のようなもの
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2018/02/04 18:03
「__緊張、しますね」

少しの沈黙の後、椿さんが先に口を開いた。

「そう、ですね。
すみません、私から通話を希望したのに」

ただの言葉だ。
言葉は、自分の気持ちを代用する飾りだ。
それなのに、椿さんから貰う言葉には、
一言が短いからか情報量が少ないからか、深さを感じる。

___もう少し前からかもしれない。

私は、この時には、もう感じていたことがあった。
心の中でふと、風のように舞込んできたことがある。

『私、この人のこと、好きになる___』

それは予感か
それは勘か
それは感覚か
それは今の気持ちか
それは今後のことを考えてか
どこからきたのか
何を思ったのか
私にだって分からない。

そう、感じただけ。
声を聞いて、言葉を聞いて、
初めての会話をして、
自然と溢れただけのこと。

それが、すべてのきっかけだけど
たったそれだけが、全てになっただけのこと。





「いえいえ…あ、曲、聞いてくださってありがとうございます。」

「あ、いえいえ、とても素敵でしたよ。
過去作含め聞かせていただきました。」

「本当ですか!嬉しいです。
ありがとうございます。」

ああ、何故だろう。
むず痒い。もどかしい。焦れったい。もやもやとする。
焦りを感じてる自分に、更に焦る。
話したいことは全て心の中で糸のように絡まり合って、まとまらなくて、
手のひらは、熱い頬を抑えながら必死に脳内巡らせて言葉を探してる。

練習なんて意味がないということがたった今証明された。
何から話そう。
いくらでも話すことならある気がするんだ。
椿さんのこと、
何も、そう…、何も知らないのだから___
「柚さん、何か話すことあります?」

おいおい、その質問はなんだね、君。

そんな台詞を思わず言いたくなったが、
いやリアルのノリじゃないんだし…と呑み込んだ。

「いえ、特には…どうかしましたか?」

「いや、僕も話すこと考えてたけど特に見つからないので、『好きなものしりとり』でもしようかな、と」

どんなものかは名前の通りだと察した。

ここで確信を持つのも変かもしれないけれど、
さっき感じた風が今、私の中で確実な岩となった。


『多分私いつか、この人を好きになる』

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