櫻「……どうしてこんな事をした?」
神「こんな事って?僕はアイツらに罰を下しただけだよ」
あなた「自覚がないの?」
松「…くそ野郎だな」
神「アイツらは悪いことをしたのに法では裁けない。だから、神に成り代わって僕がそれ相応の罰を与えたんだ。伊藤明雷なんて3人も殺してるんだ。当然の報いでしょ?」
櫻「……」
神「そして、貴方たちは僕を死刑にすることは出来ない。僕は選ばれた人間だからね。……くく、あははははははは!!」
取り調べ室に神木の笑い声が響き渡った
ギリッ
誰かの歯軋りの音が聞こえた
けど、あたしも同じ気持ちだった
確かに神木亘を裁くことは出来ない
彼もまた被害者たちと同じ未成年なのだ
たとえ起訴できたとしても死刑になることはない
それに神木の父親は…
櫻「…違うな」
翔さんの一言が神木の笑い声を遮った
神「………は?」
櫻「お前は選ばれた人間なんかじゃない。正義の味方を気取りながらも父親の権力にすがりつくことしか出来ないただの臆病者だ」
神「…何を!」
櫻「もともと犯人の目星はついていた。一般人ならともかく、未成年の犯罪者をそう簡単に見つけられるはずがない。そうなると自ずと犯人は絞られてくる。お前は刑事部長である自分の父親を利用して情報を得たんだろ?」
神「!」
櫻「それに最初は石ころを投げる程度だったのに段々と犯行が派手になっている。自分が正義の味方だと錯覚した気持ちが押さえられなかったんだろ?それなのに女は堂々と前から襲ってるくせに男に対しては不意をついて背後から襲ってる。抵抗されるのを恐れた臆病者の証拠だ」
神「黙れ…」
櫻「おまけに最後には父親の権力を使って自分の犯行を揉み消そうとしてんだもんな。本当にどうしようもないやつだ…」
神「黙れ!!」
櫻「……」
神「あんただって同じだろ。親の力を駆使して今の地位に上りつめたんだろ?なあ!櫻井警部!」
櫻「…動機は自分の存在を知らしめるため……ってところか?」
神「ああ。父は俺を無能扱いするし、周りだって親の七光りとしか見やしない。僕自身を見てくれるやつなんていなかった。だから僕は、僕にしか出来ないことをやったんだ。…犯罪者を裁くという勇気ある行動をとったんだ!!……あんたになら俺の気持ちが分かるだろ?」
櫻「だから、俺を選んだんだな。同じ権力者の息子という立場で。…だが、お前の気持ちを理解することはできない」
神「何で!」
櫻「俺は高校生の時に父親に大切な人を奪われた。だから、縁を切って自分の意志でこの道を選んだ。今の階級も自分の力でのしあがってきたものだ」
神「……」
櫻「確かに権力者の子どもは周囲から七光りと言われることも少なくない。けど、お前自身を1番見ていなかったのは……神木亘、お前だよ」
神「……」
ガクッ
その言葉に神木亘は膝から崩れ落ちた
翔さんはそんな彼を見下ろしながら取り調べ室を後にした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。