第2話

くもりのち晴れ2
56
2019/04/14 10:45
はい、どうぞ
あなた

ひゃっ

学校の最寄駅からちょっとだけ離れた駅。私がきちんと肩の力を抜けるように、なんて言って昴さんはいつもこの駅を選んでくれていた。
決して派手な場所では、最先端の場所ではないけれど大きいショッピングモールもあるし、治安もよくてだいたいいつもここでのんびりデートしてる。
緊張からか、少し火照った顔にひんやりとした飲み物を押し付けられて思わず声を上げてしまった。
昴さんと一緒にいるといつもこうだ。ドキドキさせられっぱなし。
あなた

びっくりした……

思わずぽつんと言葉がこぼれ落ちる。
そんな私のことなんか気にも留めず、にこにこと笑う昴さん。
あなた

ほんとやめて……

えー怒んないでよ、あなたちゃん
はい、とその冷えたペットボトルを差し出してさりげなくご機嫌取り。
しかもちゃっかり私の好きなやつだし……
あなた

……お金、払いますよ

そんなこと気にしなくていいのに
あなた

私は気にするんです

なんかあるたびにこの会話を繰り返す。
やっぱりどうしても、申し訳なさが残っちゃうから。
気にしないでって
まぁ折れちゃうのはいつも私、なんだけどね。
いつもの優しい笑顔でほほ笑まれたら引かざるを得なくなっちゃうもの。
あなた

……いつもほんとすみません

そこはすみませんじゃなくて?
あなた

……ありがとうございます

よくできました、なんてぽんぽんと頭を撫でられる。
こうやってちょくちょく甘やかしてくれるとこ、ちょっと照れ臭いけどそれと同時になんか嬉しくてまたちょっぴり鼓動が高鳴った。
少し前の自分からは想像できないような糖度の高い毎日。
あなた

(すべての始まりはあの日だったな)

ぼんやりと頭の片隅で昴さんとの出会いを思い出した。

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