学校の最寄駅からちょっとだけ離れた駅。私がきちんと肩の力を抜けるように、なんて言って昴さんはいつもこの駅を選んでくれていた。
決して派手な場所では、最先端の場所ではないけれど大きいショッピングモールもあるし、治安もよくてだいたいいつもここでのんびりデートしてる。
緊張からか、少し火照った顔にひんやりとした飲み物を押し付けられて思わず声を上げてしまった。
昴さんと一緒にいるといつもこうだ。ドキドキさせられっぱなし。
思わずぽつんと言葉がこぼれ落ちる。
そんな私のことなんか気にも留めず、にこにこと笑う昴さん。
はい、とその冷えたペットボトルを差し出してさりげなくご機嫌取り。
しかもちゃっかり私の好きなやつだし……
なんかあるたびにこの会話を繰り返す。
やっぱりどうしても、申し訳なさが残っちゃうから。
まぁ折れちゃうのはいつも私、なんだけどね。
いつもの優しい笑顔でほほ笑まれたら引かざるを得なくなっちゃうもの。
よくできました、なんてぽんぽんと頭を撫でられる。
こうやってちょくちょく甘やかしてくれるとこ、ちょっと照れ臭いけどそれと同時になんか嬉しくてまたちょっぴり鼓動が高鳴った。
少し前の自分からは想像できないような糖度の高い毎日。
ぼんやりと頭の片隅で昴さんとの出会いを思い出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!