私は日和見 涼(ひよりみ すず)。
今年から中学生の一員だ。
そんなことを小声で言いながら毎朝家の玄関を開ける。
私は小学生の頃、
陰湿ないじめを受けていた。
それはとても典型的なもので
泣くほどではなかった。
しかし、私の性格にひとつ書き加えられたことがある。
それは、
他人が信じられなくなった
ということ。
原因は当時のいじめにより親友だと思っていた菜乃花に『もうかかわらないで』と絶縁されたからだった。
菜乃花はいつでも私のそばにいてくれて、
相談にも乗ってくれる大切な存在だった。
とても信頼していたし
これからもずっと仲良くしていられると思っていた。
しかし、絶縁されてからは一切言葉を交わさなくなった。菜乃花は周りの女子と私の陰口を言うことはもちろん、男子に『涼のこれ隠すとあいつ泣くよーw』などいういじめの主犯格になった。
そんなことがあり
私はどんなに 信じてるよ と言われても
誰も信じることが出来なくなっていた。
そんな性格を治すべく
中学生は頑張ろうと意気込んでいたのだが、
生憎菜乃花と同じクラスになってしまった。
私は毎日このような会話をクラス内で大声で話される。
それがどうこうなる訳じゃないけど。
中学生になって初めての
夏休みがやってきた。
死ね
そう言われて
ほんとに死んでやろうかと
知らないマンションの屋上に上がり
空を眺めていた時。
すごく綺麗…
そう見惚れていた私を現実に戻すかのように彼は言った。
図星をつかれたことにより
混乱する頭を必死にクールダウンさせながら言葉を紡いだ。
彼は死ぬことを飛ぶと表現していた。
そこに違和感を覚えながらも問いに問を返してみる。
彼はきっと本当にそう思っているのだろう。
誰が死のうと構わない。
その人が死にたいと思うなら
止めないし止められない、そう思ってるのだろう。
そんな雰囲気が彼の言葉から滲み出ていた。
この人なら
どうせ死ぬんだから
言ってもいいよね。
どうせ
死ぬんだもん。
私という存在を知る人が一人増えただけで
どうなるって訳じゃないもんね。
そう思いながら私は彼に
何故ここに居るのか、ここに来たのか
その経路を一通り話すことにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。