「今日からこのお部屋ね」
『はーい』
看護師さんに案内されて到着したのは、1人にしては少し寂しい個室部屋
「荷物は後から親御さんが面会で持ってくると思うから、もうちょっと待っててね」
『はーい!あ、自動販売機とかってどこにありますか?』
「あー、この部屋を右に出て、突き当たりを左に曲がればすぐ見えるはずだよ」
手を使って少し大袈裟にジェスチャーをする看護師さんに、ありがとうございます!と元気よく挨拶すれば、何かあったら呼んでね。そう言って部屋を出ていった。
がちゃんと閉まる扉を見届け、誰もが見たことあるような真っ白な机付きのベッドに腰掛ける
元々体が弱かった私は、最近までもっと小さな病院で入院していたんだけど、最近は少し体調が良くなくて県で1番大きな病院に引っ越すことになった
殺風景過ぎる部屋を眺める。
友達、出来るかな?
なんてそんなことを考える
私は誰かと喋りたくて仕方ないくらいお喋りで、看護師さんとか、子供たちと一緒にずっと喋ってたり遊んだりしてたくらい
でも小児科とは、棟が違うから必然的に子供たちとは遊べなくなる
ということは…私もしかして1人?
はぁ、と、出したくもないため息が出てしまう
もういいや、今考えちゃ気分が落ちちゃう
ジュース買いに行こ
ベッドから飛び降りるとギシッと古い音が鳴る
扉に手を掛けて廊下に出て右。
ぺたぺたと歩くスリッパの音が廊下に響き渡る
歩いてるうちに壁が見えてきてそこを左。
あ、あった!
なんて思ったのもつかの間、窓ガラスからさす夕陽に照らされている男の子の姿に目が入る
それは、ひどく美しいものだった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。