翌日@富室高校
動画が出回る前みたいに篤のバイクの後ろに乗って登校すると、周りがザワついた。
口々に囁かれる私たちの話。
放送部が作ったありもしない噂話でこんなにも踊らされてバカみたい。
そんな声なんて聞こえないみたいに篤は私の手を引いて校舎へと入った。
私は逃げる竜二を追いかけながら教室へと入った。
篤が指さす方には教室でひとり、曲を作っている沙織。
そういえば昨日、沙織に聞かなきゃいけないことが出来たんだった。
私たちに気づかない沙織に、篤は机を叩いて知らせた。
クラスのみんなが駆け寄ってきて、あっという間に沙織は囲まれた。
その中には彩香もいて、なんだか胸が締め付けられて苦しくなる。
そう私にだけ聞こえるような声で囁いて、私の手を握った。
篤はいつだって私が求めている言葉をくれるんだ。
突然現れたガシムラは私たちに近づいてきて、自慢げに言った。
そこからガシムラがプロデュースするきっかけを話し出した。
結局は沙織の才能に便乗しているだけなのに偉そうに話をしている。
熱く語ったガシムラは、叫びながら教室を出た。
そして、沙織も私たちの輪からそっと抜け出して教室を出ようとした。
それだけ言って沙織は教室を出ていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!