家の駐車場に車を停めて、私に降りろと命令をした。
家に入ったら何をされるかなんて分かってるから、恐怖で身体が動かない。
大声は苦手だ。
私はこの男の声で、慌てて車をおりて家に入った。
ーバシッ
平手打ちで叩かれた頬。
初めて"見える場所"を打たれて、建前とか関係なくなったコイツは何するか分からないって恐怖を感じた。
ーバシッ
ーバシッ
何度も罵声とともに殴られて、言葉も出ない。
助けて、篤。悟、竜二。
・・・みんな、助けて。
そんな思いだけが頭をよぎる。
ーバシッ
何度も何度も殴られた身体はボロボロで、床に座っていることさえ辛い。
ーバシッ
思い切り叩かれた私は床に倒れて、そのまま意識を失った。
ーピンポン、ピンポーン
どれくらい経ったんだろう。
騒がしく鳴り響く玄関のチャイムと外の音で私は目を覚ました。
何度も呼ばれる私の名前。
重たくて痛い身体を動かして、私は窓の外を見た。
門のところで私を呼ぶみんな。
三平さんや明彦和彦もいる。
外で騒いでいるのに対応していないということは・・・
書斎という名の暴行部屋を抜け出して1階に向かうと、案の定、あの人は電話で指示を出している。
きっと相手は警察の部下の人。
警察の偉い地位のあの人は、こうやって違う方向で権力を使うんだ。
バレないようにリビングを通り越して、私はそっと玄関を出ようとした。
あと少しで玄関をでるという所でバレて、私を追いかけてくる。
ボロボロで歩くことさえままならない身体を引きずりながら、私は急いで玄関を出た。
門までの道のりであの人に捕まった私は、地面を引きずられるように家の方へと引き戻される。
はずだったのに、、、
軽々と門を越えた三平さんが、私を守るように引き戻した。
篤たちも次々と敷地の中へと入ってきて、私を守るように立ち塞がる。
私の方を見て三平さんはこう続けた。
私に圧をかけるように大声で叫んだこの人に、私は大きく震えた。
だけど、そんな私を篤がギュッと抱きしめて言うんだ。
その後、部下の人が来て、私が本当のことを全て伝えるとさすがに問題になるからと家から離れて暮らせるようにしてくれた。
その代わり、父親のやったことは口外しないこと。
それが条件。
世間体を気にして、娘を手放して自分の地位を守ることをあの人は選んだ。
私を抱きしめてそっと言った篤に抱きついて、私は何度も頷いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。