第5話

壊れていく心
4,969
2020/08/13 06:00
あなた

・・・ただいま。

母親
あなたちゃん!
こんな時間までどこ行ってたの!
あなた

ハァ・・・

「おかえり」もなく言われる言葉に、ため息が漏れた。
母親
また瀬名くんたちといたんでしょ!
あなた

だったらなんなの?!別にいいでしょ!

母親
あんな不良みたいな子達といたらあなたちゃんまで不良になっちゃうわよ!
あなた

みんなのこと何も知らないくせに

母親
昔みたいに、道史くんみたいな優秀な子と一緒にいるべきよ
あなた

誰と一緒にいたってあなたには関係ないでしょ

母親の横をすり抜けて部屋のある2階へ行こうとするけど、リビングから現れた父親が私の手を掴んだ。
あなた

いやっ・・・!!

それだけなのに、私はしゃがみこんで掴まれていない方の腕で頭を守るような体勢をとる。

子供の頃から受けていた虐待のせいで起きる反射的行動。
父親
どうしたんだい、あなた
あなた

・・・

分かってるくせにしらを切る父親と、虐待の事実を知っていて気づかないフリをする母親。

本当、最低な両親だ。
父親
私の書斎に来なさい。
あなた

・・・いやっ、

父親
あなたは俺の言うことが聞けないんだな
あなた

違っ・・・

ーバシッ(殴る音)

私の頬を平手打ちする父親。
これだけで、私はもう口答えすら出来なくなる。

長年の支配は怖い。
こんなのおかしいって思うのに、それを訴えることすら出来なくなってしまうんだ。
父親
母さん、あなたと書斎で話をしてくるから。先にご飯を食べていてくれ。
母親
はい、あなた
にっこり笑って私を引きずるように歩く父親を見つめる母親。

この女に私への愛情なんてこれっぽっちもない。
私が父親に歯向かって、父親の虐待のターゲットが自分に向かないようにしたいだけ。

だから、歯向かうように私に入れ知恵しそうな"不良"を私に近づけたくないだけなんだ。




父親
入りなさい
そう言って書斎に放り込むように私を入れると、バランスを崩した私は床に倒れ込んだ。
あなた

(助けて助けて助けて)


口にしたら父親に余計殴られるのも分かってるから、私は心の中で何度も助けを求める。

誰にも届くはずのないその言葉は、次第に心の中でさえも存在しなくなって、ただ「早く終われ」って考えるだけ。
父親
お前はいつになったら言うことを聞くんだ
ーバシッ(殴る音)
あなた

・・・

父親
なんだ、その目は!反抗する気か?
ーバシッ(殴る音)
あなた

・・・


首を横に振るけど、この人はそんなことお構い無しに何度も何度も私を殴り続ける。

お腹や背中、おしりと、服を完全に脱がないと絶対見えない場所だけを殴るんだ。
世間体ばかり気にするこの人らしいこだわり。

父親
お前は私の言うことを聞いていればいいんだ
あなた

・・・

父親
分かったか、あなた?
あなた

・・・

父親
分かったかと聞いているんだ!!
あなた

・・・は、はい





こんな環境で生きていく必要なんてあるの?
こんな環境に自由なんてある?


ねぇ、誰か教えてよ。

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