第40話

恋と花火
3,795
2020/09/19 10:00
春日篤
春日篤
よし、こっちOK!
三平三平
三平三平
サンキューてるよ!
あなた

こっちも箱詰め完了♪

三平三平
三平三平
これで全部か
瀬名悟
瀬名悟
これ全部配達用?
三平三平
三平三平
あぁ。結構話題になってな!
学校の外からも注文殺到よ!
風間竜二
風間竜二
おおーすげー!マドカと妖怪スナック!
三平三平
三平三平
あっ、あなた。
ちょっと配達手伝ってくれんか?
あなた

えっ?うん、いいけど

瀬名悟
瀬名悟
俺らも手伝うよ?
三平三平
三平三平
これはあなたじゃないと意味が無いんや
あなた

なんかわかんないけど、着いていきます!(笑)

三平三平
三平三平
篤、あなたのこと借りるな
春日篤
春日篤
あぁ

三平さんと私はふたりで秘密基地を出た。




あなた

ねぇ、私必要だった?

三平三平
三平三平
あなたの出番はこれから!
・・・あっ、おった!おった!
配達も終わって、今のところ私が手伝ったことは特に無い。

不思議に思って三平さんに問いかけると、三平さんは笑って神社へと駆け寄った。
あなた

沙織?

伊藤沙織
伊藤沙織
なんでここに・・・
三平三平
三平三平
どう?調子は!
伊藤沙織
伊藤沙織
もしかしてフォローに来たつもり?
全然平気だから。
三平三平
三平三平
平気には見えんけどな。
いくらチヤホヤされても今の自分がイケてないことを1番自分が分かってる。
伊藤沙織
伊藤沙織
うるさい。私みたいに注目された事ないでしょ?
三平三平
三平三平
そらまぁ、そうやな。
そこで、あなたの出番!
あなた

私!?

三平三平
三平三平
あなたはミス富室高で地元でも知名度は高い。チヤホヤされてるけど、今の自分に自信が無い。なんか似とるやろ。
あなた

望んでこうなったわけじゃない

伊藤沙織
伊藤沙織
私だって・・・私が望んだんじゃないじゃん。みんなが私をこうしたんじゃん。
三平三平
三平三平
流されたのは自分たちじゃないの?
伊藤沙織
伊藤沙織
そうよ。チヤホヤされていい気になって。何となくウケそうな言葉並べて。尖るって何?刺さるって何?本当の私なんてどこにもいない!
三平三平
三平三平
いいやん!
伊藤沙織
伊藤沙織
え?
三平三平
三平三平
それでいいやん!今の沙織ちゃんは尖ってよ。俺には刺さってる!せっかくやからさ、自分の心のずっと奥までお宝探しの冒険でもしてごらん?
伊藤沙織
伊藤沙織
お宝?
三平三平
三平三平
色んな人に色々言われて、悲しかったり、苦しかったりしたやろ?どの瞬間が一番心動いた?
伊藤沙織
伊藤沙織
全部!全部ムカついた!
けど・・・悟。
三平三平
三平三平
見つかったやん!沙織ちゃんのお宝。逃げちゃいかんよ!沙織ちゃんはアーティストなんやから!

沙織の心の叫びが聞こえた気がした。

その声に導かれるように駆け寄ってきた悟を見て、沙織は流していた涙を慌ててふき取った。
三平三平
三平三平
お?どうした?
あなた

悟なにしてんの?

瀬名悟
瀬名悟
沙織!これ!

悟は沙織のシャーペンを差し出して、笑うんだ。
瀬名悟
瀬名悟
俺、沙織の歌すっげー好きだよ!
伊藤沙織
伊藤沙織
ありがと
瀬名悟
瀬名悟
・・・あ、そうだ!花火やろうよ!
三平三平
三平三平
え?
あなた

マジ?

瀬名悟
瀬名悟
やろうよ!
あなた

やっちゃうか!沙織!

伊藤沙織
伊藤沙織
うんっ!

悟が持ってきた花火をやりながら、無邪気に笑う悟を見つめる沙織が幸せそうで、私はそっと横に並んだ。
あなた

応援してるよ、沙織

伊藤沙織
伊藤沙織
ありがと

悟と沙織が花火をしてるのを見ながら、私は少しだけみんなから離れてひとりになってずっと考えてた。

沙織が本音を吐き出せたように、私も本音が言えるのかなって・・・。
三平三平
三平三平
どうや。あなたも心の奥の宝探し、したくなったやろ?
あなた

"私じゃないと意味が無い"って、こういうことですか(笑)

三平三平
三平三平
なんか、まだみんなに言えてないことあるやろ?本音でぶつかればあんな素敵な笑顔も自然と出ると思うよ。

沙織は心のつっかえがなくなったみたいで、キラキラとした笑顔で悟と花火を楽しんでいた。
あなた

私ね、両親から虐待受けてるの。

三平三平
三平三平
えっ?
そっと服を捲ると、昨日殴られて青々とした傷が三平さんの視界に入った。
あなた

これが言えてないこと。言うのが怖い。

三平三平
三平三平
大丈夫。篤も、悟や竜二もそんなことであなたを見る目を変えるようなヤツらじゃない!
あなた

うん、

三平三平
三平三平
声を上げてみればきっと助けてくれる仲間だ
あなた

・・・うん、そうだね、、


涙で霞んだ先には花火の光がキラキラと輝いてて、きっと全てを話せたら私もこの暗闇の中から抜け出してあのキラキラとした場所に行けるんだって、そう思ったんだ。











@秘密基地
小泉明菜
小泉明菜
[今日は今作ってるしんきのタイトルを教えてくれるってことで]
伊藤沙織
伊藤沙織
[マジか!?恥ずかしいんだけど・・・]

動画の中の沙織は楽しそうで、幸せそうで、私も今日こそは絶対本当のことを言おうって自分に言い聞かせながら動画を見ていた。
柴山道史
柴山道史
新曲?
風間竜二
風間竜二
あぁ
小泉明菜
小泉明菜
[それでは、どうぞ!]
伊藤沙織
伊藤沙織
[好きっぽいピ・・・です!]
小泉明菜
小泉明菜
[これはラブソングですか?]
伊藤沙織
伊藤沙織
[好きって言葉が1217回出てくるんです]
小泉明菜
小泉明菜
[いやいや多すぎでしょ]
伊藤沙織
伊藤沙織
[そうなんですけど、もう他に言葉は要らないな・・・みたいな]
風間竜二
風間竜二
あいつ好きな人いるの?
山田和彦
山田和彦
学校の人かな?
あなた

ふふふ・・・だから言ったでしょ?
女の子ってそういうものだって♪


私がそういうとみんな気づいたみたいで悟を見た。
当の本人は気づいてないみたいだけど(笑)
瀬名悟
瀬名悟
・・・えっ?
風間竜二
風間竜二
そういう事か(笑)
瀬名悟
瀬名悟
いやいや、なんだよ。その視線は!(笑)
あなた

あえての悟って・・・本当変わり者だよねー沙織ってー(笑)

春日篤
春日篤
あぁ(笑)
瀬名悟
瀬名悟
なんだよ、俺のこと好きだと変わり者ってことかよっ!!(笑)
あなた

あれー?誰も"好き"なんて言ってないけどー?(笑)

瀬名悟
瀬名悟
うるせー///

この時はまだ、この後起こることなんて気づきもしなくて、むしろ私も沙織みたいにキラキラした世界にいけるんだって信じてたんだ。







ーギィィー
あなた

・・・えっ、、

秘密基地の重い扉を開けたのは、
あなた

・・・なんで・・・・・・

風間竜二
風間竜二
ん?どちら様っすか?
父親
帰るぞ、あなた
春日篤
春日篤
あなた?
あなた

た・・・たすけて、みんな・・・・・・


今更出た言葉なんてもう遅くて、恐怖で固まった私の腕を掴んだ父親は無理やり私を秘密基地から引きずり出した。
瀬名悟
瀬名悟
ちょっと・・・なに?
柴山道史
柴山道史
あなたの父親・・・あなたが危ないっ
春日篤
春日篤
道史、どういうことだよ?
柴山道史
柴山道史
あなたは・・・両親から虐待を受けてる
春日篤
春日篤
・・・くそっ!!


みんなが本当の私を知って助けに走ってくれたときには、もう私は車に押し込まれて走り出した後で。



悟・竜二・篤・あなた
あなたーっ!!!
春日篤
春日篤
なんで気づいてやれなかったんだよ・・・
風間竜二
風間竜二
父親なのに虐待ってなんだよ!







私を呼ぶみんな声は、私には届くことは無かったんだ。

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