あのあと、私はどう帰ったのか分からなかった。
ずっと頭にあいつの言葉が遮って、なにかを考える余裕すらなかった。
もしかしたら、奏達に支えられながら帰ったのかもしれない。
でも、いつのまにか玄関にいたのは事実だ。
「ただいま」と小さな声でいってみる。
まぁ、誰もいないのだから当たり前だが、「お帰り」という言葉が帰ってこない。
ただ、静かなだけだった。
いや、この家に来る前も静かか。
お帰りという言葉が言われる前にも、先に
『あなた、ちょっとこっち来て。』
が先だった。
本心は嫌がりながらも笑顔でうん。と答える。
まぁ、なんのことかわかっていたが。
とてもセカイに行きたくなった。
家も静かだが、セカイの方が気が楽になる。
私は
《悔やむと書いてミライ》
を再生した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。