※第一話の続きです
そこから不死川と「秀才(笑)」の物語が始まるのだったーー
の前に、不死川という男をもっと知ってもらおう。不死川がピアニストを目指したのは、不死川が小さい頃、幼稚園の頃の話だった。不死川が通っていた幼稚園には、1日だけプロのピアニストが来てくれた日があった。その時が初めて不死川とピアノが遭逢した日だった。不死川は幼いながらも、プロのピアニストが弾く音に感銘を受けた。優しく、包み込んでくれるような音だったり、活発で、明るい音だったり、不死川はその時、音楽、クラシックにも物語があることを知った。そして、その音を聴いた不死川以外の園児の反応を不死川は良く憶えている。憧れているような、尊敬しているような、きらきらした目。
家に帰ると、不死川は直ぐ母、玄也に話した。
「ふふっ。実弥楽しそうね。実弥はピアニストに成りたいの?」
その母の一言が不死川の未来を決定づけた一言だった。そこからは大変だった。当たり前だけれど、ピアニストになる為にはピアノの練習が必要だ。不死川の家は裕福ではない。勿論、グランドピアノは買えない。アップライトピアノも難しかった。電子ピアノ(エレクトリップピアノ)、キーボードなら買えたかも知れないが、いかんせん、不死川の家は兄妹が多かった。それと、十分な広さがなかった。不撓不屈な不死川でも、諦めざるを得なかったその時、
「実弥、ピアノ教室に行くわよ」
不死川の母だった。そのままずるずると引き摺られて着いたのは、優しそうなお爺さんが先生のピアノ教室だった。なんでも不死川の母がこの教室を知ったのは、気分転換に遠目のスーパーに行っていたら、偶然ピアノの音が聴こえ、「ピアノ教室やってます」という看板が立っていたかららしい。この時は本当に感謝したのを不死川は憶えている。
そのまま、ピアノ教室に入り小、中、高不死川はそこでピアノを習い続けた。1番心配していた金銭面だったが、そもそもピアノ教室を辞める寸前だったことと、不死川の夢と、不死川の家の事をやんわり察してくれたおかげで、低い価格にしてくれた。(けれど、お礼と言って月々、和菓子を持っていったが)
不死川が伊黒と遭逢したのは、高校生の時だった、不死川と伊黒、双方共に音楽に興味があり、音楽が好きだった。人間関係としても合っているように感じ、友人と呼ぶなかになるのにあまり、時間はかからなかった。これを類は友を呼ぶというのだろう。
「ピアノを弾くのか、顔に似合わんな」
うるせェ、顔は関係ねェだろォ。伊黒もバイオリンを弾くとは思わねェよォ。
そのまま、2人とも音楽大学に進んだのだった。
「甘露寺も同じ音大に行くんだ。僥倖。」
甘露寺は音楽学部声楽科らしい
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!