第3話

3、geschwind moto
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2020/04/28 02:02
※第二話の続きです



1時間という限られた時間。不死川は「秀才(笑)」を探していた。

曰く、「秀才(笑)」はどんな難易度の曲でもさらりと弾けるらしい

曰く、「秀才(笑)」は数々のコンクールでありとあらゆる賞を総なめにするらしい

ピアノの音が聴こえてきたのは偶然だった。ドビュッシーの「月の光」広く知られた有名曲だ。不死川は思わず、息を呑んだ。一音から違う。繊細なタッチから始まり、きらびやかな倍音を加えたような音色で雰囲気を変える。繊細で、しかし十分に配慮された絶妙なテンポは、聴き手に物語を感覚的に理解させる。



「これァ、敵わねェなァ」



不死川は呟いていた。その音に感服するばかりであった。そのピアノの音と不死川のピアノの音は圧倒的な差があった。まるで、不死川が今まで積み上げてきたもの全て、「未熟すぎる」と、言われているようなものだった。

もうそろそろ曲も終盤に近づいていく。ふと、音が止まった。何だァ、ミスでもしたかァ?



ガタン!ドス!



不死川はピアノが聴こえていた教室の扉の前に居た。直ぐ扉を開けた。

人が、倒れていた。

不死川は判断、行動ともに早い。直ぐに教師を呼び、救急車を待っていた。



「ありがとう。不死川くん、助かったよ。」




「本当だ。君が居たから、早く発見出来た。」




「そんなに倒れやすいんならァ、見張りをつけたらいいんじゃァないんですかァ。」




「そうしたいのは、山々なんだけれど、彼が“ピアノの練習は1人でしたい”というものだから、、、、。。」




不死川は辟易した。うわァ、溺愛してるぜェ、口から砂糖吐きそうだァ。
それもそうだろう。「秀才」と謳っていいるのは生徒だけじゃなく、教師側もそれまた然り。

ことが急速に進んだのはその出来事から、3日後のことだった。



「お、おい、ちょっと止まってくれ」



「何だァ」



振り向いた時だった。不死川の目に映ったのは眉目秀麗の瞳が薄浅葱色の男だった。
これはァ凄ェ、射干玉の髪、容姿端麗、この外見を褒める言葉が合うヤツ初めて見たぜェ。



「き、聴いているのか、、?」



「あ、悪ィ、何だァ」



なーんかどっかで見たような顔なんだよなァ。あ、コイツ、「秀才」だ。



「俺が倒れた時、最初に助けてくれたのがお前だと聞いて、ありがとう。すまなかった。し、しな、、す、かわ、、、?」



「惜しいなァ、しな“ずが”わだァ」



「あ、、。すまない」



「別に良いぜェ。良く間違われるからなァ。別に大したことやってねェよォ。助けたっつってもォ、教師呼んだだけだァ」



「それでも、ありがとう。」



「微笑んだ、、のかァ、、?“表情筋が仕事してない”とかァ、言われねェかァ?」



「むっ、俺の表情筋は仕事している。」



その日の昼休みのことだった。不死川は何故か彼が居た、ピアノの教室がどうしても気になり、足を急がせていた。
いやァ、まさかなァ
不死川が扉を開けた。




人が倒れていた。




「お前なァァァァァァァ!!!!!!!!!」




不死川の怒声が大学に響いたとかいないとか。




「すっすまない」



「お前なァ、何なんだァ?栄養失調かァ?過労かァ?不眠かァ?」



「不死川は凄いな。全部だ。」



「ハァァァァアアアアアアア(クソでかため息)お前ェ、入院してたんじゃァねェのかよォ」



「入院は、、していたが」



ソイツの言うことを聴くとォ、直ぐ元気になれたそうでェ、家に帰り、今までしていた不眠を治すように、寝ていたらしいィ



「寝ててェ、飯食いそこねたのは解ったがァ、腹減ると普通、起きねェかァ?」



「えっと、、その、、」



「何だァ、ハッキリ言えェ」



「ピアノを弾いて、、いたんだ。昔から、ピアノを弾くと、空腹も、睡眠も、疲れも忘れて、ピアノの練習に、没頭してしまうんだ、、、」



「ハァァァァアアアアアアア(クソでかため息)ま、いいやァ、俺は不死川実弥ィ、お前ェ、なんて言うんだァ?」



「冨岡義勇だ。」



どうやら、「秀才(笑)」は 冨岡義勇 というらしい。



作者
作者
やっと、冨岡が出てきてくれましたぁぁ。長かったですね。すみません。この「ピアノと秀才」終わりまで大まかに決めているのですが、凄くぅ、長くなりそうですぅ、、。すみません。

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