奥村side
いつもの楽屋で、みんなでワイワイ騒いでいた。
コンコンとドアを叩く音が聞こえ、マネージャーが入ってくる。
いつも通り仕分けされた束を受け取り、中身を見ていく。
ちょっと怖いなと思いながらも、隣にはラウがいるから、と思い1つ目の封筒から便箋を取り出す。
そこには、罫線に沿って綺麗に並んだ暴言の数々。
見慣れた言葉だけどやっぱり怖くて悔しくて、涙が滲みそうになる。
封筒に戻し別の封筒を開ける。
バラバラとカッターの刃が出てきて、そのうちの1つが私の指をサッと切った。
血が滲み、その血が手に取った便箋にうつる。
中には、血と同じくらい真っ赤な色のペンで書かれた酷い言葉。
なんでこんなこと言われないといけないの。
そう思い温かい言葉が書かれているファンレターを探して次々と封を開けるけど、出てくるのは誹謗中傷の言葉とカッターの刃ばかり。
私の目の前には私が散らかした封筒と便箋が散らばり、血を拭いたティッシュも紛れているのに、メンバーは誰一人として私のことを見ない。
まるで私のことが見えていないかのように。
私の声でやっとみんなが私に顔を向けたけど、その目には光が一切なかった。
表情も、私がよく知る優しい顔ではなくて、突き放すような冷たい顔。
どれだけ泣いても、降ってくるのは優しい言葉なんかじゃなくて冷たい視線だけ。
なんで?
ずっと一緒だよって、10人で世界一目指そうねって言ったのは、なんだったの?
自分でも信じられないくらい泣きまくって、もう何が何だかわからなくなった頃、そのまますーっと意識を手放した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。