おむすびを持って行くと、道場内に3人の声が響き渡った。
兄は久々の後輩の稽古をしている為か、少し嬉しそうにしていた。
本来ならお面はつけて入るのだが、今日は私の素顔を知っている者しかこの場にはいないので、外している。
少し休憩しようと促すと、兄は顔色を変えて「そうしよう」と言い放った。
そんなことを言いながら、伊之助くんは私の足元に座って、いつもの猪頭を外しバクバクとおにぎりを食べている。
お茶を差し出すと、『ゴクゴク』と喉を鳴らして飲む。
「死にかけた」と呟く伊之助くんに向けて、私は優しい言葉をかけてあげた。
善逸くんと伊之助くんは喧嘩が始まりそうだし、炭治郎くんに関しては兄に言われた事を深く真に受けている。
私の励ましによってかなり元気を取り戻してくれたみたいで良かった。
普段の私は凛には敬語は崩しているのだが、今は目の前に人がいる。
だから今は敬語は崩さぬよう、いつも通り凛に振る舞っていた。
私は凛と共に、屋敷をとび出た。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!