目の前で血塗れになって倒れている紗良と虎太郎を見て、私は唖然としていた。
しのぶさんを呼びに行かなきゃ…そう思っても、体が思うように動いてくれない。
凛が急いで飛び去った。
凛も状態に気づいたのか、物凄く焦っているような感じがした。
途切れ途切れの言葉に、私はもう手遅れだと思った。
もう少し早く気づいていれば、もう少し早く行動していれば……紗良と虎太郎は助かったかもしれないのに。
私の優柔不断な性格のせいで、紗良と虎太郎をここまで苦しめてしまった。
まだ幼く未来が見える優秀な剣士を私はこの場で手放してしまう…罪悪感しか無かった。
しのぶさんの声も私は遠のいていた。
それほど目の前が真っ暗で何も見えない状況に陥っていた、それは自分でも分かるほどに。
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それからどれくらい経っただろうか?
あれから紗良と虎太郎は数人の剣士に運ばれて蝶屋敷へ連れて行かれた。
私は無意識について行ったみたいで、ふと気づくと蝶屋敷馴染みの壁柄が伝っていた。
私は安心からなのか、頬に涙が伝っていることが分かった。
ふと気がつくと誰かに抱きしめられていることが分かった、それも兄さん。
凄く冷めた声が聞こえる。
この声は多分無一郎くんだろう。
どうしてそんなに冷たい声をするんだろう。
ピリピリとした空気感。
私はたちまち嫌になってしまい、兄さんから離れる。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!