第100話

継子の運命
332
2021/12/01 13:03
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
紗良……、虎太郎?
目の前で血塗れになって倒れている紗良と虎太郎を見て、私は唖然としていた。

しのぶさんを呼びに行かなきゃ…そう思っても、体が思うように動いてくれない。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
凛!
(なまえ)の鶯
あなたの鶯
何よ
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
しのぶさんを今すぐ呼んで
(なまえ)の鶯
あなたの鶯
え、紗良…虎太郎?
なんで、何があったの?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
いいから早く!
しのぶさんの後は手の空いてる柱の方を!

兄さんも呼んできて欲しい。
(なまえ)の鶯
あなたの鶯
分かったわ!
凛が急いで飛び去った。

凛も状態に気づいたのか、物凄く焦っているような感じがした。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
紗良…虎太郎!
紗良
紗良
あなた……姉、逃げて。
虎太郎
虎太郎
こっちに来たら、狙わ…れる
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
え?
それより誰にやられたの!?
紗良
紗良
私たちはだいじょー、、ぶ…それより、早く、逃げて?
途切れ途切れの言葉に、私はもう手遅れだと思った。

もう少し早く気づいていれば、もう少し早く行動していれば……紗良と虎太郎は助かったかもしれないのに。

私の優柔不断な性格のせいで、紗良と虎太郎をここまで苦しめてしまった。
まだ幼く未来が見える優秀な剣士を私はこの場で手放してしまう…罪悪感しか無かった。
胡蝶しのぶ
あなたさん!
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
しのぶさん……
紗良と虎太郎はもう手遅れです…よ。
胡蝶しのぶ
そんな事ないですよ
私に任せて欲しいです。
しのぶさんの声も私は遠のいていた。

それほど目の前が真っ暗で何も見えない状況に陥っていた、それは自分でも分かるほどに。
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それからどれくらい経っただろうか?

あれから紗良と虎太郎は数人の剣士に運ばれて蝶屋敷へ連れて行かれた。

私は無意識について行ったみたいで、ふと気づくと蝶屋敷馴染みの壁柄が伝っていた。
月詠 瑞稀
月詠 瑞稀
あなた、大丈夫か
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
兄さん……
紗良と虎太郎は?
月詠 瑞稀
月詠 瑞稀
………無事だよ。
胡蝶が懸命に粘ってくれた。

今は一命を取り留めて眠っているよ。
何者にやられたかは知らねぇけど、無事なら良かった。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
良かった……良かったぁ……
私は安心からなのか、頬に涙が伝っていることが分かった。

ふと気がつくと誰かに抱きしめられていることが分かった、それも兄さん。
月詠 瑞稀
月詠 瑞稀
泣くなよ、あんまりこういう所を琥珀に見られたくはねぇけどよ。

大好きな妹には笑顔でいて欲しいし、これくらい許されるだろ。
時透無一郎
瑞稀さん、あなたから離れて下さい。
凄く冷めた声が聞こえる。

この声は多分無一郎くんだろう。
どうしてそんなに冷たい声をするんだろう。
月詠 瑞稀
月詠 瑞稀
いいんだよ、こいつから抱きついてきたんだからよ。

別に時透には関係ねぇだろ。
時透無一郎
ありますよ
ピリピリとした空気感。

私はたちまち嫌になってしまい、兄さんから離れる。
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