悩みもなく相部屋で良いと言った時透さんに私は驚いてしまった。
私は一応女性であるからだった。
女将さんがそう言った。
私達が泊まる部屋は奥の方にあって九畳くらいの部屋だった。
分かる事だが二人ようで鬼狩り様のために用意された部屋だと見た瞬時分かった。
簡単に説明してくれた女将さんは一礼して部屋を出て行ってしまった。
どっちかと言うと詳しく説明して貰いたかったがその願いは届く筈も無いだろう。
あまり時透さんと居ては危ない気がしたからだ。
突然名を呼ばれ私はビクッと反応してしまった。
私の兄は【闇柱】と【影柱】の二つ柱の名を掛け持ちしている。
何故かと言うと母方の祖父母も鬼殺隊の剣士で祖父母に育てられた兄は祖父母から教えられ【闇の呼吸】と【影の呼吸】を入手した。
沈黙が長く続いた。
それを壊すように扉が開いた。
私は今お面をつけておいて良かったと思った。
今の顔は多分物凄く赤くて熱い。
見られたら絶対に照れてると笑われるだろう。
そんなにおかしな事を言っただろうか?
クスクスと笑う時透さんを見て私は不思議に思ってしまった。
黙々と食べ進める私を眺める無一郎くんはとても楽しそうに見ていた。
そんなに私が食べる様子が面白いのか途中にクスクス笑う場面もあった。
この後緊張するお風呂の時間。
部屋にお風呂があるため、どちらかが先に入らなければならない。
初めての男性とのお泊まり。
意識しては駄目な気がするが、女性に産まれたなら仕方がない事だ。
少し溜息を吐くと私はご飯を食べ進めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!