第18話

二人きり
941
2020/10/19 12:51
宿の者
鬼狩り様で御座いますね?
お泊まりなされるのですか?
時透無一郎
はい
宿の者
畏まりました。
お部屋は一つしか御座いませんが、宜しいでしょうか?
時透無一郎
大丈夫です
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
えッ…!?
時透無一郎
ん?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
いや…何でも無いです。
時透無一郎
そ。
悩みもなく相部屋で良いと言った時透さんに私は驚いてしまった。
私は一応女性であるからだった。
宿の者
お部屋の準備が出来ました。
私に着いてきてくださいませ…
女将さんがそう言った。
私達が泊まる部屋は奥の方にあって九畳くらいの部屋だった。
分かる事だが二人ようで鬼狩り様のために用意された部屋だと見た瞬時分かった。
宿の者
ご案内致しました。
お風呂やお召し物などは此方が準備出来次第お呼び致しますので、それまでゆっくりとお寛ぎ下さいませ…
簡単に説明してくれた女将さんは一礼して部屋を出て行ってしまった。
どっちかと言うと詳しく説明して貰いたかったがその願いは届く筈も無いだろう。
あまり時透さんと居ては危ない気がしたからだ。
時透無一郎
月詠さん…
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
はッ…はい!!
突然名を呼ばれ私はビクッと反応してしまった。
時透無一郎
どうしたの…そんなに驚いて。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
いや突然に声をかけられたもので…
時透無一郎
ふふッ…なんか可愛い。
月詠さんってお兄さんいるんだよね?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
あ、はい。
闇柱と影柱という二つの柱の名を持っている兄の瑞稀の事です…よね?
時透無一郎
あ、そうそう瑞稀さん。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
良かったです…
私の兄は【闇柱】と【影柱】の二つ柱の名を掛け持ちしている。
何故かと言うと母方の祖父母も鬼殺隊の剣士で祖父母に育てられた兄は祖父母から教えられ【闇の呼吸】と【影の呼吸】を入手した。
時透無一郎
この間稽古をして貰ったんだけど、凄い威力だった。
兄妹揃ってやっぱり強いって事だよね?
月詠さんは何故夜の呼吸なの?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
私は父に教わっていて、兄は母方の祖父母に教わった呼吸なんです。
時透無一郎
そっか…それって幼少期の時生き別れの兄妹みたいなものだったの?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
あ、はい。
当時兄は街でも問題児で祖父母に引き取られたんです。
時透無一郎
問題児…
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
あ、本人は悔いているようなので本人の前では話さないで下さいね?
時透無一郎
分かった
沈黙が長く続いた。
それを壊すように扉が開いた。
宿の者
お召し物の準備が出来ました。
時透無一郎
お腹空いた…
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
それ程…お腹は空いていませんが、食べないと体力持ちませんから。
時透無一郎
女の子なんだから食べなきゃ
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
なっ…!?
女の子扱いですか?
時透無一郎
そうだけど…駄目だった?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
いえ駄目ではありません。
寧ろ心配してくれて嬉しいです…
私は今お面をつけておいて良かったと思った。
今の顔は多分物凄く赤くて熱い。
見られたら絶対に照れてると笑われるだろう。
時透無一郎
嬉しいんだ。
てかお面外さないの?
食べにくくない?
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
このお面は特殊なので口を開けてくれるんです。
時透無一郎
ふーん…てか僕の前だし外してもいいよ。
どうせ僕すぐ忘れちゃうからさ
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
覚えてたらどうするんですか。
それで外す程私は馬鹿じゃないですよ。
時透無一郎
ふふッ…硬いなぁ。
僕の方が年下だから別に敬語なんて使わなくてもいいのに。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
女性は年下でも稽古を使う文化があるんですよ、多分。
時透無一郎
そんな文化聞いた事ないけど…?
そんなにおかしな事を言っただろうか?
クスクスと笑う時透さんを見て私は不思議に思ってしまった。
時透無一郎
てかあなたって言っても大丈夫?
月詠さんなんて何か距離感じるし…
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
別に構いませんよ。
時透無一郎
僕の事も…無一郎でいいよ。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
無一郎くんで…
時透無一郎
呼び捨てがいいのに
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
あまり呼び捨てなどはしたくはありません。
時透無一郎
硬いなぁ…
黙々と食べ進める私を眺める無一郎くんはとても楽しそうに見ていた。
そんなに私が食べる様子が面白いのか途中にクスクス笑う場面もあった。
この後緊張するお風呂の時間。
部屋にお風呂があるため、どちらかが先に入らなければならない。

初めての男性とのお泊まり。
意識しては駄目な気がするが、女性に産まれたなら仕方がない事だ。
月詠 (なまえ)
月詠 あなた
ふぅ…
少し溜息を吐くと私はご飯を食べ進めた。

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