私は無一郎くんに一礼するとお風呂へと向かった。
一番の危機感を感じるのは素顔を公開しない事だ。
バレてしまったらきっと笑われるだろう。
幾ら炭治郎さん達が「可愛い」だの「綺麗」だの言ってくれても私は【かぐや姫様】には届かない程の名前負けだ。
私のお面は水に弱いのだ。
素材が柔らかい為溶けやすく、水を浴びるだけで溶けてしまう。
『ポチャン』
と水飛沫が音を立てた。
水飛沫の音以外は何も聞こえずとても静かだった。
その途端『ボチャン』
水上に私のお面が浮いていた。
掴もうとした時には、もう溶け始めていた。
完全に水に溶けたお面を見て私は唖然とした。
私がオロオロとお風呂内を歩き回っていると、お風呂の扉が開いた。
私はその場にしゃがみこみ、顔を隠すように足に埋もらせた。
無一郎くんは絶対に心配している顔だろう。
焦って出て行った。
私は持ってきてくれたタオルを体に巻き付けると外に出た。
少々顔がバレても仕方が無いと覚悟し私は震えながらも外へと行った。
真剣な顔で言う無一郎くんは遊び半分などそんな表情は一切見れない感じだった。
私にしっかりと向き直ってくれ、真剣な表情のまま私に話してくれた。
急に下を向いた無一郎くんの耳は真っ赤に染っていた。
残念がる無一郎くんを見て、私は首を傾げてしまった。
どうして一番最初が良かったのか…イマイチ分からない言葉だった。
私は最後まで良く分からなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。