side 海人
玄関の前でしゃがみ込んでいると
『はあっはあっ…あれっ…っはぁ…海人?』
えっ…!?
そこには
「幻覚?俺かぐちゃんに会いたすぎて幻覚見てんの?」
『何言ってんの?…っはぁ…やっばぁ疲れた』
息を切らせたかぐちゃんが立ってたんだ
「…っ!」
不意に目頭が熱くなって、じわっと視界が歪む
『ふふっ(笑)おいで海人』
そう言ってくれたかぐちゃんに飛びついた
『うわっ…!』
勢いをつけすぎてグラッと傾いたかぐちゃんを抱きとめて、そのまま"これでもか!"っていうくらいの強さで抱きしめる
『海人?ちょっと苦しい…』
「会いたかった…っ
今日は…来てくれないと思って…っ」
『海人?』
顔を上げると、優しく笑ったかぐちゃん
『私はどんなに忙しくてもメンバーの誕生日は絶対にお祝いするよ?
海人の誕生日に間に合うように超巻いたもん私(笑)』
「スタッフさん達にも協力してもらってねー」と自慢げに話すかぐちゃん
その言葉にまた、じわっと涙が浮かぶ
そんな俺を見て、またギュッと抱きしめてくれたかぐちゃんが何かを思い立ったようにぱっと腕を離した
『あ、そうだ』
「ん?」
『はい。まだ日付変わってないから
お誕生日おめでとう』
「ありがとっ」
『これからも事実上の末っ子でいてね?』
「それはやだなぁ」
『精神年齢的に見たら、多分私の方がお姉ちゃんだよ』
今年はかぐちゃんのお兄ちゃんになれるようにがんばろうかな?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!