俺は勢いよく起き上がった。
辺りを見回すといつもの知っている光景。
俺の部屋だ。
前髪をかき上げながらそう言った。
父は亡くなり、母は昏睡状態。
祖母は体があまりよくないので俺を育てるのが困難だった。
そのため父の葬式のとき親戚が集まって相談した。
ただどこの家も俺を引き取りたがらなかった。
そんなとき、俺を引き取ってくれたのが今の両親だ。
だから俺はこの家族に感謝している。
血も繋がらないのに本当の息子のように、弟のように愛してくれたこの家族に。
俺はベッドからおりるとリビングへと向かった。
リビングには姉貴が朝ごはんを作ってくれていた。
姉貴は手を止め、俺の方を向き微笑んだ。
姉貴には見透かされたか。
今日は父の命日であり、母が昏睡状態になってからもう10年がたった。だから今日は父のお墓参りをして時間の許す限り母のところにいようと思う。
そして俺は朝食を済ませ、着替えると家を出た。
姉貴は微笑んで見送ってくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。