あれ?もしかして聞こえてなかったのかな…?
もう一度言わないとだめかな?
でも何回も思い出したくないし…
どういうことなんだろう?
気づいたときには美晴くんの顔がすごく暗かった。
耐えていたのにまた涙がこぼれた。
今日の私、涙腺弱すぎ。
美晴くんはまた私を抱き締めてくれた。
言えない…
「キスしたのは入谷です。」なんて…
私は驚いてバッと後ろを向いた。
でも後ろには誰もいなかった。
ただ名前を聞いただけなのに
過剰反応してしまった。
体をよく見ると小刻みに震えている。
自分ではまったく気づかなかった。
手で押さえても止まらない。
美晴くんは私の震えを押さえるように
抱き締めてくれる。
そう言うと美晴くんの抱き締める力が
ぎゅっと強くなった。
私は小さくうなずいた。
それを聞くと美晴くんは優しく笑って言った。
そしてため息をつき立ち上がった。
彼の声色が急に変わった。
美晴くんは淡々と話した。
表情はいつもと違ってる。
もしかして怒ってくれているのかな…?
そうだとしたら入谷と喧嘩に…
やっぱり美晴くんの大声には なれなくて
驚いてしまう。
でも…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!