ゆっくりと瞼をあける。
目の前には泣いて目を赤く腫らした
美晴くんが すーすーと寝息をたてて寝ている。
あの後私たちは泣きつかれて寝てたみたい。
それも美晴くんは今も私をしっかりと
抱き締めたまま寝ている。
…って、あれ? 今何時だろ…
手元に置いてあったスマホを取り起動してみると…
あまりの驚きで大声を出してしまい、
慌てて口を自分の手で塞いだ。
どうしよう…というか何時間寝てたの!?
帰らないと…!
あ、叫んでたから起こしちゃったみたい…
扉を開けて勢いよく飛び出すと誰かにぶつかった。
あれ?この人…もしかして…
やっぱり!?
前に家族写真見たからもしかしてと思ったんだけど
でも…あの写真美晴くんが小学生の時だよね…?
あのときとほとんど変わってない。
すごく美人で美晴くんにも似てる…
美晴くんのお母さんはそういってくすくす笑った。
その笑顔もやっぱり美晴くんにそっくりで
見とれてしまった。
そうすると美晴くんのお母さんは少し
困ったように私に問いかける。
って、いや!そんなことより私!
私は家族水入らずの時間を減らしてるんだった!
挨拶して早く帰らないと…
私が慌てて断ると
美晴くんのお母さんは首を横に振る。
美晴くんのお母さんが笑顔で問いかけると
美晴くんは苦笑いしながら首を振る。
ふたりの会話が面白くて私はふふっと笑う。
美晴くんはゆっくりとベッドを降りた。
美晴くんあんなに泣いてたんだもん…
辛くない訳がないよね。私は美晴くんをとめた。
そして私と美晴くんのお母さんは彼の部屋を出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。