手際よく定員さんがチケットを確認していく。
そう言って私たちにイルカのキーホルダーを渡してくれた。
そういうと店員さんはにこっと笑う。
じっと、もらったストラップを見ていると彼は言う。
それから私たちはたくさんの水槽を見て回った。
ぴたっと私が足を止めたのはくらげの水槽だった。
半透明のくらげが照明に照らされ、ぷかぷかと浮いている。私は目を輝かせながら水槽を見ていた。
カシャ、
シャッター音が聞こえ、その方を向くと彼がスマホをこちらに向けていた。
いたずらな顔をして彼は頷いた。
恥ずかしさと彼の笑顔に私も写真をとる。
カシャ、
写真を見ると満面の笑みを浮かべている彼がぶれなく綺麗に撮れていてとても嬉しくなった。すると私のスマホに向けて彼の手が伸びてくる。
“おあいこでしょ?”と問いかけると彼はゆっくりと手を下ろした。
そんな彼が可愛くて私はつい微笑んだ。
するとイルカショーが始まるというアナウンスが流れる。
会場にはたくさんの人がいた。
私たちは前から3列目のところが空いていたのでそこに座ることにした。
イルカショーが始まるとイルカ達がスタッフの人の笛の合図でイルカが跳んだり、まわったり…。
次の笛の合図でイルカが深く潜る。そして、大きなジャンプをした。バシャン!と音がしたと思うと大きな水しぶきが私たちにまでかかってくる。
私はカバンからハンカチを取り出すと自分の顔を拭く。美晴くんは大丈夫かと思って見ると彼は袖で顔を拭っていて、前髪からはポタポタと水滴が落ちていた。それを見るとドキッとしてしまって。
私は彼の顔をそっと拭いた。
くしゃみをすると彼はそっと自分の上着を私にかけてくれた。
彼は満足そうに微笑んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。