優しい声、
見慣れた顔
思わず頬が緩む
あなたの一人称は拓也に本気で怒られたことはない
拓也だって人間だしずっと笑顔で居られる訳がない
何となく口に出してしまった
慌てて上書きしようとする
急に近づく拓也の顔
真剣な表情は一変、いたずらっぽく笑う
拓也を追い出そうと押していた手を離す
拓也って本当に怒らないよね
壊れないのだろうか
少し心配だった
でも拓也が怒っている所は見たことがある
あなたの一人称がナンパされた時、男性に対して低い声で怒っていた
「何やってんの、」
ってあなたの一人称の前に立ってあなたの一人称を守ってくれた
そのおかげであなたの一人称は助かった
それでも電話は切らない
小学2年の夏、あなたの一人称は虐められていた
それを当時6年生だった拓也が助けてくれてあなたの一人称が中学に入るまで仲良くしてくれていた
そして助けてくれたその日、あなたの一人称がお礼を言うと
「虐められてる事は親知ってんの?」
そう聞かれあなたの一人称は首を横に振った
その瞬間低い声で言われた
「親を、大人を、年上をもっと頼れよ」
その目は、その声は
痛みを知っていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。